昨日美容室で、髪の毛を少しだけ切った。それは少しだけ特別な気がする、月曜日。髪の毛を少しだけ切った事あの子に気づいてほしくて、お早うと挨拶をする。彼女もお早うと挨拶をする。いつものように、雑談に花を咲かせる。が、一向に葵ちゃんは私の髪の毛の事に触れる気配は無かった。なんだかがっかり半分に葵ちゃんに自ら言ってみた。「昨日ね、髪の毛切ったんだ」「うん、知っているよ。少し短くなったなって思っていたの」予想外な事に、すぐに気が付いていたとの回答を得られた。じゃあ、なんで触れてくれなかったのだろうと若干落ち込み不貞腐れそうになっていたところ葵ちゃんがクスクスと瀟洒に笑った。



「そりゃあー、気づくでしょ。ほぼ毎日逢っているんだし」「そ、そっか」だよね。毎日のように逢っていれば僅かな変化でも敏感に感じ取れることもある。勿論ちょっとずつ変化していくものには中々気づけないのだけど。「凄く似合っているよ」「有難う」お世辞でも葵ちゃんに言われると凄く凄く嬉しいよ。女の子ってやっぱり気になる人には、すぐに気が付いてほしい変化があるから。なんて豪語しているけれども、自分で女の子と例えるのは少しだけ気が引けた。私は可愛い女の子にはなれないから。そう、葵ちゃんの前でだけ、ちょっとだけ可愛い女の子で居たいだけ。「可愛いなって思ったの。だから、すぐに言えなかったのごめんね」葵ちゃんってば意外と照れ屋さんみたい。気恥ずかしくて言えなかっただなんていうもんだから本当その華奢な体を優しくギュウと抱きしめたくなっちゃったの。



「でも!あんまり可愛くなられるのは嫌なの!」葵ちゃんが急にせきを切ったように言い出した。何でなのか、わからずに目をパチクリとしばたたかせて葵ちゃんの淡い青色を溶かした瞳を見つめた。「だって、他の男の子が名前ちゃんを好きになって取られちゃったら私、嫉妬しちゃうかも!」友達を取られた!と思う気持ちなのだろうか、はたまた。裂罅から入り込んでくる緩やかな気持ちに、私は戸惑いを覚えた。私、他の男の子には興味が無いの。葵ちゃんの前で砂糖菓子のような甘ったるい女の子を演じて居たいだけ(甘い甘い、)。それからね、葵ちゃんも私の前でだけ可愛い女の子で居てほしいなって思うの。葵ちゃんの口元が緩やかな曲線を描いた。やっぱり葵ちゃんは可愛い。「あのね、私名前ちゃんのこと」



「“好き”でも、あまり可愛くならないでね。私だけが名前ちゃんの可愛い所知っていたいから」今ならどんな苦行にも耐えられると思った。甘い音の響きは、脳髄を溶かすほどにクルクル回り続けている。完全に浮かれきっていた。ずっとずっとポケットに隠していた、思いも今なら許される気がした。「私も、好き。葵ちゃんの前でだけ可愛い女の子で居たいよ」太陽が星々を隠すように燦々と照らす。


ジャルゴン


  


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