サル



「僕の伴侶に成ってくれないかな?」そう言うサルはどんな時よりも真剣そうに見えて、幾分か心臓の鼓動が早く叩いた気がしたがそんなの、問題ではなかった。目の前のサルがどうして、いきなりそんなことを言い出すのか、そここそが問題の部分で提示された部分であった。どうして、と瞳を少しだけしばたたかせて首を傾げた。もっと、それが本気ならばもっと、場所や日時を考えればいいのに。此処は皇帝と名乗る彼の部屋でこれからの事について話したいと言われたから来たまでだった。だから、行き成りこんなことを言われたという事に成る。可笑しな話だ、まだ彼女とサルは付き合ってすらもいない。だから、伴侶も何もなく、色々な行程をすっ飛ばしてそこに行きついているのである。彼女が戸惑うのも無理はなかったのだ。



「意味が分からないよ」「そのままの意味さ。僕の伴侶に成ってくれないかな?と思っただけ。一応、これには拒否権とかもあるけれど」サルにしては珍しく拒否権などというものが、用意されているらしく完璧に彼女の回答次第と言ったところだった。彼女も珍しいな、なんて思いながらくすくす忍んだように笑った。「変なの。だって、それじゃあまるで大人の、真似事よ。メイアとギリスのような関係ならばまだわかるけれど、それを飛ばして伴侶?」僕は真剣なのだけれどもな、と困ったようにされども何処か怒ったように口元を歪ませた。「メイアとギリスも仲がいいと思うけれどね。でも、僕は違うんだよ」「例えば?」「例えば、そうだな。伴侶だから夫婦の方が近いかな。僕は今回、お願いするような立場なんだよ」珍しいだろう?皇帝の僕の頼みなんだけど、と何処か自嘲気味に笑って見せた。



「私より強い子くらい、居るじゃない」「君じゃないと駄目なんだよ」「それに突然、変よ。熱でもあるんじゃないの?サル」そう言って、サルにおもむろに近づきおでこに向けて手を付けて、自分のおでこにも手を付けた。熱を測る仕草をしてんぅーと唸り「大変、熱があるみたいよ」と大げさな口ぶりで言ってのけた。サルはその手を掴んでやれやれといったポーズをして顔を近づけた。「いやだなぁ、熱があるのは君のせいだろ。それに突然じゃない。いや、君にとっては突然かもしれないけれど、僕は僕なりに悩んできてその結果を伝えただけにすぎやしないのさ。僕たちは寿命が短いだろう?だから、早々に、そう……次へつなげなければならない。だから、君が欲しい」「なんだ。事務的みたいな事なのね、ならば余計に力の強い子を選ぶべきよ」サルの手を振り払わずに愛しげに空いている片方で撫でて諭すように言った。「いや、君じゃなければ駄目だよ。そういう効率で選んでいるわけではないからね。それに、そういう意味でなら君じゃない方がよっぽどいいだろうね」失礼なことを言っていながらも、彼女は不機嫌に成ることはなく寧ろ嬉しそうな顔をしていた。「そうね、じゃあ皇帝さんの伴侶とやらに成ってみようかしら」


  


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