ロデオ



大きな段ボールを二つ抱えた女の子がふらふらと、覚束ない足で何処へやら運んでいた。その様子を遠くで見ていたのはロデオだった。手伝うつもりもないくせに近づいて挑発的に笑った。口元は見えないのだが、目元はニマニマとお世辞にもいい笑みとは言えない笑顔で笑っていた。「何よ、ロデオ。手伝ってくれるの?」じゃあ、一つ持ってよと少しだけ前に突き出すとロデオはケラケラ笑い声をあげて「そんなわけねぇだろ」と言ってのけた。それに対してみるみると不機嫌に成ると、フンと鼻を鳴らした。「……何よ!これだから、ザンの人間は乱暴で野蛮で嫌い!」意地悪と怒って眉根を寄せた。「何だよ、それ!これだから、優等生のいい子ちゃん達は!俺たちだってお前らなんか嫌いだ!」彼らはとても、そりが合わないようである。ザンに属する人間は確かに、やや気性の荒い者が集まっているのだが、こういわれれば気分を害すのは間違いがなかった。現にロデオも、気を悪くしてしまった。



「そういうやり方はどうかと思うなぁ、感心しないよ、ロデオ」サルが口元に手をやって、そういうものだから、ロデオも「はぁ、だよな」とやけにしおらしく頷いた。それは、同意を示していた。「……でもよ、できねぇんだよ」「何でだい?ただ、簡単に「重たいだろ?俺が手伝ってやるよ」って言うだけじゃないか。好きな子が能力を使わずに、頑張って重たい荷物を運んでいたら僕ならそうするけどなあ」ロデオはそれとも、あの子の事あんまり好きじゃないのかな?なんて意地悪のつもりか、そう聞いてくるので「いや、違う。そんなわけないだろ」と慌てて否定してそれを打ち消した。「ふぅーん。なら、手伝ってきたらいいじゃないか、もたもたしていると僕が彼女、取っちゃうよ?僕、彼女の事結構気に入っているんだよね」ふふと鼻歌を歌うように、上機嫌で言うものだからロデオが慌ててサルを気にせずに駆け出した。



あの子はまだ、武器の詰まった段ボール箱を地道に移動させていた。どうやら、一箱、二箱のレベルではなくいくつも大量にあるらしい。彼女一人だけならば一体、どれだけの時間を要するのだろうか。それは、ロデオにも計り知れないことだった。「よ、よぉ!まだ、やっているのか。鈍間」言葉遣いは相変わらずに彼女の背に話しかける。彼女は振り返ることも無く「また、ロデオね……、何?邪魔をしにきたの?」と彼を邪険にするような言葉を吐き出した。ロデオが若干顔を渋めながら「いや」と言った。それから、いつになく素直に「お、俺が手伝ってやろうと思って」と彼女の横に並んだ。それから、二つ積んであった段ボールの一個をやすやすと持ち上げた。



「何……ロデオ悪いものでも食べたの?」「……違う!あ、あんまりこっち見るな!」隣をロデオが顔を真っ赤にさせて、すたすたと前へ彼女を顧みることも無く前進していった。「ちょ、ちょっと!ロデオってば!……有難う!結構優しい所あるじゃん!」「(まさか、奴と普通に話しているだけで顔が赤くなるなんて、ばれたくないしな)」


  


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