しつれん



新たな開拓のつもりでやったら夢主の口調が迷子になった。演技がかっていて割とウザめ。茜への片思い。




それが男のロマンだというのならば女のロマンというものもきっと、この広い世界のどこかに落ちているはずなのだ。恐らく世界の中心、核の辺りにでも行けば見つかるさ。「しかし、男のロマンとやらはなかなか奥が深い」「……私、ちょっとわかる」ぷにぷに柔らかくて暖かな二つのそれは、女の私から見ても浪漫があると思う。だがしかし「腰やうなじ、それから太腿なんかもとても浪漫がある代物だと私は思うんだ、茜。しかしだな、丸見えには浪漫が無い!チラリズムだよ。チラリズム。……思うに私は世の男性はこれにとらわれ過ぎだと思うのだよ」要するに胸だ。……結論的に女性の体は基本的に丸みを帯びて男とは違う魅力にあふれる、そうは思わんかね。茜に同意を求めるように、覗き込めば「うん」と控えめな返事が返ってくる。控えめな子は好きだ。そう、大抵そういう子は押したら楽しい反応が返ってくるのだ。個人的には水鳥も。多くの男子や女子は彼女を怖がるが、何言っているんだ!とか憤慨しながらもとても女性的な反応を示してくれる。



「逆に考えて、我々女のロマンとはなんだろう」茜に今度は同意ではなく、意見を求めてみた。茜は可愛らしく首を傾げて、うーん……と真剣に考えてくれている様子だったので、ついつい頬の筋肉を緩めてしまった。「腹筋とか、胸筋……?ゴツゴツしているところ?」考えあぐねた結果、その結論に達した様だ。でも、その結論だと神童はどちらかというと華奢なので茜の言う浪漫には到底及ばないような(むしろ逆?)……などと失礼な事を考えてしまった。「成る程。……神童は線が細いけどな」「そこも素敵!」「……土埃に塗れてもいい男とはいい男という事なのか」スペックが高いからな……彼は、うん。頭もよけりゃ勉強もできる、ついでにとても繊細で音楽センスは抜群、みたいな素晴らしい才能を開花しまくっている。此処まで来ると同じ人間とは思いたくない。違う人類だと思わなければ、虚栄心に苛まれて死んでしまいます!状態になる。



「名前ちゃんにとっては、何が浪漫なの?」神童の線が細いと言ったことと自分の結論に対しての問いかけだろう。私は持論を持ち出さなかったからだ。「私か?私は好きな子が居ればどんな事でも浪漫になるのさ。いうなれば、好きになった子が浪漫だ、浪漫は常にうつろいやすいものだ」「たとえば?」「そうだな、難しい。水鳥も葵も可愛いと思うし、茜の言うように神童も格好いいと思うし、霧野や天馬なんかも魅力的だな。皆が皆魅力的な面があるが……だが、私は茜が今の浪漫だぞ」その挙動一つ一つに目を奪われてしまうのだよ。例えば、神童を追いかけて綺麗な一枚に収めるその細い腕も、神童に向ける熱い視線も、それから、丁寧に結われた柔らかい色合いの三つ編みもだ。全て含めて、私はそこに情熱を感じる。茜がキョトンとしていた。それもそうだろう、私もどうかしていたと思うのだから当事者の茜は私が壊れたと思っているだろう。



茜からの回答を得たかったわけではなかった。最初からだ。「何、別に私は茜をどうこうしようなどとは思っていないさ。対象が私になど成ってしまえば魅力が半減してしまうだろう」要するに、単純に言えば「今の茜が素敵だという事だ。……ん、あれは神童じゃないか?」遠くのぼんやり揺れる人影を指差して茜に示せば茜が、私の浪漫をくすぐる麗しい笑顔を咲かせた。茜よりも先に私が見つけるのは珍しいなと思いながら駆けて行く茜を見送った。「しん様〜!」いつものカメラを片手に。小さくなっていく背中、やはりそこに痛々しい程の浪漫を感じる私が居た。「……そろそろ私にも新たな浪漫が必要だな」僅かに自嘲染みていた、沁み渡っていく痛みと共に広がる。だが、やがては広がるのをやめる。そろそろ見切りをつけなければならない。……欲を言うならば、今度は手に入る浪漫がいい。


  


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