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 青が招く出会い


≫薊、由汰ちゃん、世里奈ちゃん


薊は機嫌が良かった。それは、追い求めては恋い焦がれていた『坊っちゃん』が通う学園の寮長として傍に居る事が許されたからである。何度自身の運に感謝したかは数え切れない。与えられたそれを甘受し、ひたすら薊は喜んだ。やっと、やっと会える!ただそれだけが薊の胸中を支配していた。

―――だからこそ、街中で歩いていた薊が小柄な少女とぶつかってしまう事なんて、日常的に有り得ないのだ。

「い、った……!」
「あ、申し訳ありません!大丈夫ですか?」
「ちょっと、由汰、大丈夫なの?
「ん、へーき。つか、お姉さんこそ平気?頭、思いっきり当たったけど」
「はい、私は平気にございま……『お姉さん』?」

ぶつかった少女はどうやら学生らしい。額を押さえながらも薊を気にする様子に少しばかり好感を抱きながらも、問われた言葉に素直に返事を返す。―――然し、『由汰』と呼ばれた少女は自身を『お姉さん』と呼んでは低い位置から一生懸命に顔を上げていた。

180p以上はある薊を『お姉さん』と表した由汰に隣で学校帰りの食べ歩きに付き合わされていた世里奈は、つり目がちな双眸をこれでもかと見開く。これがお姉さん!?表情に書かれたそれをひっそり見た薊は小さく笑った。

「失礼ながら、私、早乙女は男にございます」
「………マジか」
「何処からどう見ても男でしょうが!」

世里奈の拳骨が由汰の頭頂部に落ち、鈍い音と共に由汰は地にしゃがみ込む。そんな一連の遣り取りを見た薊は、何とも言えない気分に陥りながらも、着流しから伸びた白い手がそろりと由汰の額を撫ぜた。―――キョトンと由汰は薊を見たが、「ありがと、お兄さん」口端を気怠そうに上げる。

濃紺の着流しが珍しいのか、由汰の隣で佇んでいた世里奈の視線が痛いが今は良いかと薊は頷いた。「では、失礼しました」恭しく頭を下げた薊は『着流しを纏った好青年』にしか見えないだろう。世里奈の横、道路側を歩き出した薊の背を眺めながらも、立ち上がっていた由汰は右手を緩く振った。

「綺麗な人だったね」
「何処かで見たような気がしなくもないんだけど…御曹司とかかしら?」

うんうんと頷く由汰と首を傾げる世里奈。実は世里奈の執事のちょっとした知り合いだと言う事は、当人達の預かり知らぬ所と言った所だろう。



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