箱庭本編 | ナノ




 君によく似た化け物を知ってる


チームに所属する事に異論は無かった。

ネオン街の路地裏の奥に存在する静かなバーで集まるのが主。暇潰しだったり様々な理由で、のらりくらりと集まるその光景を我ながら人数が多いなと笑いたくなりながらも脚を組んで眺めていたのだ。声は紡がない。誰かが勝手に押し進める問答に是か否かを首を動かすだけで伝わるのだから。即ち、意思疎通の為に口を開く必要無し。

傍らに置かれた酒は飲みもしないのにただ一口喉に通して、やけに甘いなと笑う。笑みを浮かべればざわめいていた周りが静かになった。

───俺が所属するチームは美形遭遇率と美形勧誘率が限りなく高い。特攻隊長や参謀のような役割を果たす者、その他諸々の連中が強者であり美形。それらの頂点に立つ己の凡庸さに笑みが漏れてしまう事が嫌いでは無かった。

「総長!もっと飲んで下さいよ!」

赤髪に黒いメッシュを入れた男が甲斐甲斐しく構ってくるが、それも知らぬ振り。至極どうでもいい。そんな素振りを見せながら隣でフードを深く被ったままの相棒によって握られたままの手を握り返す。唯一無二の存在。この隣に存在する事が至福で幸福。互いがそう思ってる事は長年の付き合いで自負していた。

「総長に触んないでね、シュン」
「副総長まで辛辣過ぎます!」

流れに流れていつの間にか組織の天辺。地区で1、2を競う強さを誇るこのチームはただの暇潰し。自身は巻き込まれただけで執着心もこれと言って無かった。ただ心配で、幼なじみが抱える病をどうにか支えてやれないかと考え込んだ結果の末路。後悔はしていない。懺悔もしない。

「あ、そうだ!忘れてたね、総長」

耳通りの良い声が耳朶に触れて通る。少し思案して、ああそう言えばそうだったと顔まですっぽりと隠されたフードの下の顔に手を滑らせた。撫でて、確かめて。指先で叩く。これで終わるのかと少しだけ安堵しながらも、これからのチームの行く末を考えて目を伏せた。

「なあにィ?総長達だけ秘密のお話ズルイですよォ!」

番犬と謳われる男の茶色い毛を指で梳きながら宥める様子は見ていて微笑ましい。両腕と首に付けられた黄色の派手な首輪に笑みが漏れる。犬には犬らしく。それが幼なじみである彼が譲らなかった事だ。幼なじみをチーム内のコードネームで呼んだ彼はピアスを引っ張られて身悶える。

「犬はすっこんでな。……総長と俺の秘密だもんね?」
「……」

一つ頷いて地に伏せた犬を撫でる。幼なじみがぎゃあぎゃあ叫んでいるがうるさいから無視。引っ張られたピアス穴から血を出している犬にどうしようかと柔らかな毛並みを確かめるように撫でながら思案。

指に付いた赤は恐らく血液だろう。隣から嬉しそうに笑みを漏らす幼なじみを視界に入れたので、取り敢えず口に突っ込んだ。───暫く目を瞬かせていたが、フード下から見える頬は赤く染まっているので自身の行動は正解だったのだろう。

水音を聞きながら、俺達を見上げる犬に手を振りかぶった。

「要らない」

これが、終わりの合図。





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