オリジナル小説 | ナノ




 愛し合うなら別料金で


「うっひょー!八雲ちゃーん!!約三時間振りの再会だよおおお!!」

「そうだね、こんにちは坂巻くん」

「こんちゃーっす!お昼食べちゃった?」

「え?…ああ、まだだけど…」

「だったらさ、購買行かね?」

見せたい本があるんだよね!ニヤニヤ笑いながら私の腕を引く彼に、拒否権も無いよねと笑う。わざとらしく笑ったままの坂巻くんとの遣り取りは既に一年間続けられたものだ。同一の趣味を持っているからだと他の生徒達は気付いているからか、日頃から続く私達の言葉の応酬を眺めては笑う。坂巻くんに巻き込まれる私を見て笑っているのか、私を振り回している坂巻くんを見て笑っているのか定かでは無いけれど。

ガタンと音を立てて立ち上がる私を見下ろしながら待っている彼は優しい。これで腐男子なんて損じゃないかなあと思いつつも口には出さずにいた。カバンから取り出したアニメキャラがプリントされた小銭入れを手に、おいでおいでと手招きをする坂巻くんの隣に並ぶ。真っ白で綺麗な廊下に出れば、何人かの生徒が私の隣に立つ坂巻くんを見て声を上げた。黄色い悲鳴である。不快感を露わにせず、内に留めた彼の腕を引いて私は足を踏み出した。

「坂巻くん、」

「…んー?どうかした?」

顔が引き攣ってるだなんて言ってみろ。きっと彼はそう言った私に苦笑を見せながらも、女の子達に上手く応対して別れるだろう。この特殊な学校での彼の位置は正直曖昧だけど、それは私も同じ。───ほんとにどうかしたの、八雲ちゃん。ふざけた声色が無くなって、思わずハッとする。顔を上げれば、眉を寄せた坂巻くんが私を見ていて、いつの間にか女の子達は居なくなっていた。私は笑って答える。今度のコミケの創作物で百合を扱おうかなって考えてたんだよね。そう答えれば、眉間に寄せていた皺を無くして、目をキラキラと輝かせた彼が私の手を引いた。

「百合!俺もやりたい!」

「じゃあ、話を考えてもらってもいい?」

「うん!…やった、八雲ちゃんと共同作業ー!」

高らかに突き上げられた拳を見上げて笑う。暫くしてから私を慕ってくれる後輩がそんな坂巻くんに跳び膝蹴りをするのも一つの習慣だ。

「坂巻飛鳥ーーーっ!!!」

「空斗ちゃんこわっ!!」


皆嶋八雲/坂巻飛鳥/相田空斗





××××××
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -