「おっ、送るね…!」
「おう。つーか井上、お前変な汗かいてんぞ」
「嘘っ!?臭う!?ごっ、ごめんね黒崎くん!」
「いや臭わねえよ」
熱くなったままの頬を押さえられない事にどぎまぎしながらも、握り締めた携帯に映る『受信中』の文字にだらしない笑みが浮かぶ。
確かアドレスを交換してないんじゃないのと言い出したのは浅野くんだった。そこにたつきちゃんが面白そうに、でもどこか呆れたように笑いながら「あんた達まだアドレス交換してないんだね」と呟く。それに頷いたのは私で、黒崎くんは頭を掻きながらポケットに入っていた携帯を取り出して私に手渡した。それで、「やり方、あんま分かんねえからやってくんね?」と照れたように笑ったのがついさっきの事。
「あれ、黒崎くんはアドレスって初期設定のまま?」
「…あー…変えんの面倒だし、やり方分かんねーし」
「それより、もういけたか?」私の右手と左手に収まった携帯を覗き込もうと黒崎くんは膝を折って手許を見る。ふわりと香ったオレンジ色の髪を整える為の整髪剤の香りに私の顔がカッと熱くなった。
離れた場所で「青春ですわねえ」と笑った朽木さんには、あげようと思っていたうさぎの人形を見せびらかして自慢しようと思う。
byブリーチ