きっかけは些細な事だった。わざとらしく溜め息を吐いて組んでいた腕をぼんやりと見ながらも、目の前で馬鹿馬鹿しい言い争いを眺める。始まりは女子バスケ部エースである青峰さんの一言だった。ふわふわと柔らかい髪を靡かせた黄瀬さんの髪を邪魔だと一蹴した事である。正直どうでもいいのにと思う訳だが、青峰さんと1on1をする為には髪をどうにかしろとの事。ツインテールにしていた髪を掴まれた黄瀬さんは蜂蜜色の目を瞬かせながら次第に波立たせては、私を巻き込みだした。

「くっ、黒子っち!!青峰っちが酷いっス!」
「あ?あたしはその綿飴みたいな邪魔くせえ髪をどうにかしろって言っただけだろーが」

きゅんきゅんと鼻を鳴らして飼い主に縋る犬のようにしか見えませんと言いたくても、私に助けを求める黄瀬さんに甘いのも自負している所為か柔らかい髪に指を滑らせて慰めてしまう。そんな私を甘い!と怒号を散らす青峰さんはいつの間にか紫原さんが赤司さんの元へ連行しており、彼女の青い襟髪がゆらゆらと揺れているのを視界の端に捉えた。

私より少しだけ身長の高い彼女は片口に顔を埋めて小さく笑う。これもいつもの事ですねと呟けば、「私の髪の毛を邪魔だって言う青峰っちが悪いっス!」と言われた。

「…いや、でも、まあ、邪魔ですよね」

ぺしんぺしんと私の頬を叩く髪を掴んで言えば、彼女の肺活量が分からなくなる程の声音で「黒子っちいいいい!!」と泣かれる。思わず目が合った緑間さんに助けを求めようとしたけれど、彼女は瞬時に踵を返した訳で。

あの、離して下さい。うざいです。

トドメを刺すのも、私の役目だったり。

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