風の力で街に来たのはいいけど、なんだこれ。どうしてわたしが。絡まれなきゃいけないんだ。巨大な男が数人囲んで絡んできた。黙って聞いてれば奴隷にして売り飛ばす、とか良からぬのが聞こえたんですが。そんなひ弱じゃありません。早くどいてくれないかなあ。



「見るところ、結構いい女じゃねーか」

「ありがとうございます。感謝はしてますが、誰も言いなりになるとは言ってないので」



颯爽と立ち去る。それが最善だ。

ここはチーシャンの街、オアシス。人が集まり、隊商や市場が開かれている。そこの領主は悪名高いと聞く。



「そんなもんの奴隷になってたまるか!」

「、!こら、待て!」

魔法を無闇に使うと目を付けられるので普通に逃走。息切れも良いところ。後ろを見るが追ってくる人影は無かった。撒き成功である。全く奴隷がいる世界なんて無くなればいい。不平等だよそんなの。


そうだ、服を買おう。お金はどうしたかって?聞かないでほしい。それが無いのだ。身なりだけはちゃんとしたいのに。軽い布だけでもわけてくれないかなあ。困った。


「お嬢ちゃん、お悩みかい?」

「っ!」


人の良さそうなおじさんが話し掛けてきた。人の気配に敏感になってるわたしはまだ警戒をほどいていないらしく睨むような体勢になってしまった。

「えぇ、まあ」

「俺のとこで働かねーか?お金に困ってんだろ?」

「…、はい。」



怪しいところは無かった。どうやら五日間滞在するようでそのうちの二日を荷物運びとしてわたしを雇ってくれるというのだ。ありがたい。果物や酒を運ぶといった作業を難なくこなした。力業とか自信ないから、ちょっと風の魔法使って浮かしてるんだけどね。ばれなくて良かった。



「…あ」



頭上に藁皿を乗せ果物を運ぶ赤髪の少女を見つけた。珍しい。目が合うことは無かったが暫く観察してると足元には不自由な鎖がついていた。今は領主がいないからちょうどいいのではないか。彼女に逃げるチャンスを与えよう。









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