何かがわたしに触れた。一瞬だったけど、確かに。まだ頭がぼんやりする。覚醒しろ、起きなきゃ。口の中は乾燥するし、体は熱いし。脱水症状を起こしたのかと思うくらいに変だった。それに感触がリアルに感じる。そうこれは、


「…ん、」


ぼやけた視界に映るのは砂。え、どこまでも果てしないイコール砂漠。うわあとんでもないところに落としやがった。ウーゴくんめ。いや彼は悪くない。ここに落としたのも彼が言う運命なのだろう。変えることのできない魂の歩み。
だが、しかし、なんでだ。

なんで裸?
服をくれ。


切実な願いが届いたのかルフが集まるのがわかる。ピィピィうるさいのは気が引けるけど我慢我慢。右目は長すぎる前髪により隠れてた。あれ、アシンメトリーって奴です。眼帯は手の中にあった。なんだ、取り外せるじゃん。鏡を見ていないから今どんな顔をして何色の眼をしているのかが気になる。目覚ましてこんないっぱい考えるなんて。わたしどんだけ。回転早いのかな。それにしてもぐるぐる気持ち悪い。そうだ起きなきゃ。




「…よい、しょ」

「起きたのかい?」

「え」


突然の声に焦る。人の声だ。一人だと思っていた。だからわたしは今伸びをしてるというのに。目の前の人間を見る。

やっと気づいたんだねぇ。おねいさん、凄く綺麗な鳥が飛んでいたんだ!それもいっぱい。

少年は笛に向かって良かったよ、なんて言っていた。わたしが起きるまでいたらしい。

悔しいくらいに鮮やかな青はわたしの碧と似ていた。系統は違うが。ニコニコと嬉しそうに近付く少年に既視感を覚えた。



「…少年、きみは」


裸はルフが守ってくれたとして保留だ。この少年をわたしは知っている。長い髪を密編みで結って頭にターバンを巻いてる少年を、わたしは、知っている。
口を開いて真相を聞こうとした。そうすれば理解できる。


わたしは知っている。


先に少年が顔を綻ばせながら言った。




「おねいさん、僕はきみのことを知ってるし、きみは僕のことを知ってるよね?」









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