黄瀬がどう思ってわたしをここに連れてきたかなんてきっと本当の意味を彼もわたしでも気づきはしないだろう。それくらい、まだ幼い二人でしかないのだから。


高級マンション。え、黄瀬って一人暮らしなの、と尋ねるとどうやら高校に入ってかららしい。収入源だってモデルやってるわけだから充分にあるんだろう。わたしは稼いだお金は一人占めにはしないで、両親の給料と同じ扱いだ。みんなが平等に。今までお世話になってるわけだし、この行為は自主的だ。それなのに隣の男はよっぽど稼ぎが良いのか、こんなマンションに一人暮らしなんて。裕福で幸せすぎる。彼は苦労を知らないのだろう。天才として生まれたのだから。

反射で黄瀬の手を握り返してしまった。息を呑む音が聞こえた。わたしからも黄瀬からも。



「なんか意外っす…。名前ちゃん深刻な顔して、役に入り込みすぎでしょ」

「黄瀬くんが演技って言うからだよ。それだけ」

「…、とりあえず入ってくんないと何も進めないっすけど」



呆れたように笑う黄瀬。また無理して笑ってる。そこは笑顔じゃなくてもいい。冷たい目で見下せばいいじゃないか。なのにそれをしないのは彼は何枚もの仮面を被っているから。化けの皮と形容してみた。





お邪魔します、とわたしが言えば黄瀬は頑なに拒んだ。仲良くなるつもりはないようだ。無理矢理来させといてその態度は些かどうなのかと口を曲がらせるところだが敢えて黙っておいた。話したいことって何だろう。




意図はわからない。わたしと彼を繋ぐ糸があるかもわからない。




「俺が女の子いれるなんてそう無いっすからね。名前ちゃんはそういう意味では特別かな」

「あーそう…」

「冷たいっすね相変わらず。」





特別っていうか特殊でしょ。好いてもないのに易々家に入れるなんてそうそうない。なら、嫌がらせとか。



「スキャンダルにでもあいたいの?」

「俺が?まっさか、特定の子なんていないしつくるつもりもないっすからね」

「満更でもなさそうだけど」



「まー。…名前ちゃんって俺には冷たいよね」



一度目を伏せ次に見たとき黄瀬の目はまさしく人を見下すそれだった。ほんとうに上手い。これが本題か。

黄瀬の部屋に案内され座ったときの緊張が戻ってきた。落ち着くことなんて出来ないのだけれど。




「他の人にはヘラヘラして、」

「わたしを招いた理由がこれか」


「そっす。名前ちゃんの核心に近付くために」



それはまるでお前を潰してやると言われるのと同じだった。




「そんなにヘラヘラして人気とか人格あげようとしないでくんないすか」







/
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -