輝きに溢れた新生の星誕生!、
と雑誌やら新聞に報道されてるのをみて最近人気だった名前がまた拍車をかけて売れ出した。ほんとうに有名人だ。だけど名前はそれを自慢することなくひたすらに台本を読んで黙々と努力するだけ。授業もちゃんと受けてるし、性格が悪いなんてことはない。

名前は女優である以前に模範生でもあった。学校としてもそれは鼻が高い。どうぞどうぞと名前に好き勝手やらせてる。ご贔屓にと言わんばかりの教師からの熱烈なアピールはたまに傷だが、名前はそれなりに充実した生活を送っていた。

だが、自由な校風を裏目に少しずつ何かが動き始めていた。






黄瀬涼太は名前を嫉妬の対象としてはじめはよく思っていなかった。だって売れっ子だから。彼からしたらライバルだから。たとえ名前にそんな意志がなくても。


黄瀬は自分をよく知る人物だ。容姿端麗な外見からは女に言い寄られ、その気さくな性格から好かれやすく、何一つ不自由な生活ではなくて。そんな日常に満喫していた。友人がいるからこその自分、先輩と共にバスケをする自分、モデルとしてかっこいい自分。所謂黄瀬は少しナルシストな部分があるようだ。自分大好きなのだ。自分以外の同種の人間が頂点に立つのが許されなかった。そんな人間がいたらとことん潰してやろうと思える卑劣な男。

黄瀬は自室のベッドの上で今月表紙を飾った雑誌を惚々と読んでいた。自身のインタビューとそれに合わせたピンナップを見つめる。そして今日も黄瀬涼太は生きていると自覚するのだ。全くひねくれた性格だ。捲るページは自分以外の同種を探すために。




「…、いたし」




手を止めて写っていたのはほんの一部だが同級生の名前。期待の新生なんてタイトルで若干固い笑顔を浮かんだ名前がそこに写っていた。何と憎らしいことか。例え一ページでもその存在感は大きい。初めてのインタビューてことでもあり、名前の趣味やタイプが載せられていた。好きなことは歌をうたうこと。好きな男性のタイプはこれまた万人受けの好きになった人。なんだそれ。嘘つきも甚だしい。黄瀬は無性に苛ついた。だって名前の歌ってるところなんて見たことない。仕事を貰うための商売文句だろ、どうせ。どこまでもこの男はひねくれていた。



同じクラスに二人も芸能人がいることはそこに在籍しているクラスメイトにとって何と幸運なことか。美男と美女。ナルシストと努力家。相容れない二人。翌日、黄瀬は珍しく名前に話し掛けた。






「おはよッス、名前ちゃん。雑誌の記事読んだッスよ、あれ歌うまいんスか?」



見たことねーし聞いたこともねーけど。皮肉めいた言葉をどう受け取ったか名前は真っ直ぐに黄瀬をみた。






「おはよう黄瀬君、それねストレス発散になるんだ。だから好きなの。むしゃくしゃしてる時に感情的に歌ったり、途端に詞を書いてみたくなったり。何か本業とは関係ないことほど熱中しちゃうんだよなぁ…。黄瀬君は何でもできていつも羨ましいなって思ってるよ。努力してる素振りなんてないってことは何処か影で密かに頑張ってるって。わたしは要領よくないからこうやって学校にも持ってきてるんだけどね」



「…」




よく喋ること。そんなに俺に話しかけられて嬉しかったか。でも顔に赤らみはない。微かに見えた光にライバル心を名前も持ってることを伺えた。


自分は天性の才能を持っているので恵まれたのか努力することはなかった。全部生まれもっての才能、天才なのだ。声を張り上げて言いたかった。黄瀬は名前とは違う。凡人は天才に追い付けないと。だけど名前はゆっくりと着実に黄瀬に近付いてる。追い抜かれる日はそう遠くないだろう。




「そんな風に思って貰えるなんて嬉しいッス。…ありがとう」












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