「別れてほしいんだ」
苦虫を潰したような表情で語る彼に胸が痛くなった。何でどうして、と問いかける勇気さえなかった。わたしは何故だかいつかこういう時が来るのを予知していたから。飽きて、捨てられると。でも彼は優しいからそれを引き延ばしてくれたのだと。
「うん、ありがとう。今まですごく楽しかった…!」
彼にとっては遊びとか軽い心なんだろうけど、わたしにとってはどれも大切な思い出だった。
だから、ありがとう。
「…怒らねえのか、」
何でそんなあっさりしてんだよ、と睨まれた。睨まれたといっても敵意はないわけで。わたしは一度目を伏せてから青峰君に向き合った。
「ううん、本当は聞きたいことあるけど、わたしにそんな聞く価値なんてないから。青峰君を縛り付けたくない。今までの関係が君を苦しめてたのかなと思うとわたしも悲しいんだ。だから、その別れは正しい、よ…」
「…、言いながら泣くんじゃねぇよ。それが後悔だってんだ。別にお前が飽きたからとかじゃねえよ。その、なまえが大人すぎて着いていけなくなるていうか…俺には早すぎた。だから改めてなまえと向き合いたいから、こうしたんだ」
「じゃあ…別れ話じゃないの、?」
「まぁ一度はそうなっちまうけど正しい言葉使うなら、待っていてほしい」
なんだ。もう終わりかと思ったからため息つけて後ろ向いて泣けたのに。これじゃ台無しだ。心構えしてたのに。話は全くの逆方向に進んでいて。泣けばいいのか笑えばいいのかわからなくなった。
「わかった、待ってるよ…。…大輝」
「今更名前で呼ぶとかずりぃ…離れたくなくなる」
少しだけ待っててと、契りにキスをした。