いつも周りばかり気にかけて自分には無頓着。お前、いっつもそれ言うけどさ、自分にも当て嵌めてみろよ。しっくり来るぞ?一人で何でも抱え込もうとするな。

なまえは俺とシン、マイの幼馴染みだ。やっと大学生になれたと大喜びなのはわかるが、シンがまだ受験生だということを知って欲しい。そうなまえという人間は無垢で素直だ。正直者で感情屋。涙脆いところもある。ちなみに俺がちょっとでも叱るとすぐ泣く。おいおい、もうちょっと頑張れよ。だってトーマが怖いんだもんとシンに泣きつかれたときにはもっと怒ろうかなとか思ったり。折れるのはもちろん俺だ。なまえが離れていかないように幼馴染みという型に嵌め込んでるし自分の気持ちも抑えてるつもりだ。マイにはバレバレだと笑われた。気付かないのはなまえだけだと。それはそれで有難い。唯一自分の口で言いたいし大切にしたいから。もし告白したらなまえは何と言うだろうか。冗談やめてよ、とかはきついかな。年下ってこともあるからそこは大人って奴を見せつければなまえも意識はしてくれるだろう。

しかし現実はそうは甘くなかった。云える、云えないじゃない。これは対象外ではないか。未だに俺をお兄ちゃん扱いするなまえ。自らを卑下しこれからをどうすればいいか相談してくるなまえに着々とアドバイスをするが、時間が進むほど俯くばかり。

泣かせちゃった、?



「…なまえ、大丈夫か?」


顔を覗き込んだ。なまえのそこまで大きくない目には涙の膜が張ってありこれ以上下を向いたら落ちてしまう。こんなときに不謹慎だけど可愛いとも思ってしまう。好きな子の涙目はアウトだろ。



「…トーマ、はわたしのことっ、嫌いにならない?わたし、皆を大切にしたいって思うのと、…反対に独り占めしたいって思う…。それはいけないこと…?」

「…え?」


「わたし、ずっと我慢してた。年下だからって甘えてたけど…やっぱり特別になりたいよ…!」



がばっと細っこい体が俺を抱き締める。あれ、期待していいのかな?柔らかくて細い髪を梳きながら、なまえの肩に顔を埋めた。何か良い匂いもする。この雰囲気に乗っかって俺もなまえと堕ちていこう。



「俺にとって、なまえは特別だよ」



最大の二文字はお前に言わせて。








第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -