愛することは素晴らしい。
優しさに包まれたならきっとあたしはそんな哲学ぽい発言をしていたんだろうなあ。残念ながら親の愛情などもらっていない。その分あたしは歪んだ。自覚するくらいに。平気に人前で悪口を言ったり、世間で言われるいじめだってやってきた。悪の塊だ。性格悪いしそりゃ評判は悪かったさ。もうこのままでいいやって何度投げやりにしたことか。

悪い子ね。
そう言って叱るのは誰。あたしに怒る人なんていない。呆れているんだ。社会のゴミは放置ってわけか。公正する気もない。昔、聞かれたことがあった。寂しくない?何言ってるんだ。こうやって生きてるだけで平々凡々なんだから、あたしはそれ以上を求めない。何より愛を知らない、知りたくなかった。飢えた子供みたいになりたくない。弱くない。

学校なんて、中退だ。今周りで笑ってる女子高生、カフェで寛いでいる社会人、全てが憎く見えた。みんないなくなればいいのに。幸せなんて要らない。





「クソ食らえっつーの」


「おねいさん、寒くないかい?」

「……な、」



まさに独り言だった、はず。白い鳥?蝶?に包まれたチビがあたしに投げ掛けた言葉。暖房効いてるから寒くねーし。話しかけてくんな、コスプレチビ。




「おねいさんのルフは、飛びたそうにしてるよ」

「うっせー、話すなチビ」

「ひどいよ、僕の名前はアラジン!おねいさんは?」


「…」




アラジンとか。こいつ頭大丈夫か?そういう夢物語は他に当たれっての。無視を決め込み立ち上がる。長らくたむろしていたらしい。もう夜も遅かった。こんな子供放っておけばいいのに。

歪んだあたしにまだ良心があったのか、



「チビ帰らないとあぶねーぞ」




立ち去ってくれが本望だった。こいつは奇怪すぎる。なんだよ青い髪に密編みとか、どこの国の野郎だ。



「やっぱり優しいんだ。…てっきり怖いひとだと思ってたけど本質は変われないんだよ」


少し目を見開いて驚くチビ。そのあとはだらしない顔で笑っていた。ざあぁと風が吹き荒れ髪がボサボサになる。帰る場所なんてないのに、帰りたいそう思ってしまう。




「あたしに話しかけんな、何回言ったらわかんだ!」



「きみは、来るべきだ」


此方に、



誘われた?差し伸ばされた手を振り払う。知らない。あたしを気にかける人間なんていない。あのチビだって妄想に違いない。なのに、初めて中身を言われた。今まで悪を被って生きたのに。剥がされた気がした。あのチビはあたしを見てくれていた。悪い子ね。とも言わずに。叱らなかったのだ。チビなのに大人に見えたのは純粋で無垢だからだ。何にも汚れてないからあたしには、希望にみえた。だけど踏み入れるのが怖い。


あーあ、せっかくのメイクも取れちゃった。










「おねいさんのルフは、飛びたそうにしてるよ」

ルフってなんだ?あたしの居場所を探す道標か?とりあえず会いたい。確率は低い。けどあたしならやれる。そう思った。



「チビー!いや…アラジン出てこい!話がある!!」




大声でそれも人通りが多いショッピングセンターで叫んだ。思い切りだ。呼んだかい?昨日ぶりのチビをみて歓喜した。




「連れてってほしい。そこにあたしの居場所があって、そんで、生きる価値があるなら、」




輝いたチビの笑顔を見てこいつといんのも悪くねーかなと思えた。




「もちろんさ!僕に掴まってね、えーと名前は?」


「あたしはなまえ。旅のお供よろしく頼むな!」




てっきり外国とか異国を想像した。急にピィピィと鳴き出した周りの鳥が数を増やして視界を覆い尽くす。予想を裏切られた。だってこれはまさかの、


「何処行くんだ…?」

「こことは別世界だよ!そこならなまえだって楽しいし、求めるものだってある」



「聞いてねーよ!」
「今言ったからさ」
「順序ってもんがあるだろ!」





愛することは素晴らしい。
これから回る世界であたし言えたらいいな。
まずはこいつとのコミュニケーションからだ。


やれるよ、君なら。
だって君は優しいからさ!












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