なまえは真名と禁断を結びたかった。できるなら彼女の望むイヴにアダムになれたのなら、どれだけ必要とされたか。だが愛だけは確かに存在していた。なまえが真名に望むものは確かなる身体だけでいい。心はもうとっくに誰かのものだから。
「…なまえ?」
クリスマスにはイルミネーションを見ようね、なんて毎年教会に集まっていた。懐かしい思い出。全部記憶している。プレゼント交換したりおめかしして気取ったり。
今日はそのクリスマスで教会にいて真名からのプレゼントを開けようとしたとき不意に名前を呼ばれた。
「なまえはずっとワタシのだよね。信じてるからね。あ、あとその中身は開けても何もないから!メリークリスマス、なまえ」
「真名も私の、だよ。」
実際箱には何も入ってなかった。少し吃驚するも嬉しい言葉をもらえただけで充分だ。単純な思考でいつもいい方に結びつける。なまえは無垢でそれ以上に素直だった。真名は何度かなまえの感情を利用したこともあり、今もワタシの、だなんて言ってなまえを離さない。自分からは求めない癖に狡い人間だ。
だからなまえも少し調子に乗って真名を独占したいセリフを言う。
真名のその細められた目の真意はわからない。まるで愛しそうに見つめる視線は熱を帯びていて、
なまえの瞳の奥の色まで探るように見つめて、
「なまえ」
もう一度名前を呼ばれて、
クリスマスだからって、
「…!」
少し調子に乗っていたかもしれない。その日は初めて真名となまえはイケナイことをしたようだ。口合わせをしただけだが同性のふたりにとっては刺激が強いもの。神様は赦してくれるのだろうか。神聖な教会で、はしたない行為を嘲笑うだろうか。それとも罰するのだろうか。今だけはそんな思考も隅に置いて真名との時を堪能したなまえ。だって真名がこんなにも近いことなんてないのだから。羽目を外すくらいいい。全ては自分のために。
「…くるし、」
「はぁ…」
ようやく唇を離したと思えば次は抱きつかれた。そこで初めて真名が泣いていたのを知った。
「本当はね、みんな大好きなのに、変わっていっちゃうの。私の体が汚くなって、心も駄目になっちゃうんだ。…だからこれだけは伝えたかった。自分の意志で、なまえに。大好きだったよ、愛してる…。」
「…!いきなり告白されてもなぁ、〜っ」
真名は旨を話した。自分はウイルスに侵され自我を保ちにくくなっていると。これは告白なんかじゃない。正常な真名との別れなのだ。愛は永遠だが、余りにも脆すぎた。
真名は確かになまえを愛していて、でもそれが正常じゃないのかと疑ってしまって伝えるのが怖くなった。利用したかもしれない。だけど気づいたの。大好きなのはなまえだけだよ。
「お別れ、だよ?私は行かなきゃ、…」
そこからはどうなったかなんて。なまえはロストクリスマスの第一被害者として発見された。涙さえも結晶と化してしまった姿は、綺麗だった。なまえの右手は微かに光を灯していて、力の暗示を示すようなもの。しかし真名の求める王にはなれなかったなまえ。その意思は誰が引き継ぐのか。