同じクラスの青峰君はとてもバスケがうまいらしい。そんな情報を聞いた。知らない方がレアらしい。あの帝光中からやってきたキセキの世代の一人、しかもエース。桐皇生の私にとってもバスケが強いのはとても嬉しい。青峰君とは話したことないから少し怖そうだなぁ。いつも寝てるし、睨むような目付きだし関わりにくいんだけど。






「あー…わり、それやっといてくんね?」


とある日の放課後、青峰君は任された仕事を私に押し付けたのだ。それは資料運びなわけで。普通こういうのは男がやるもんだろ、と軽く睨んでやりたかった。だがあの目付きには敵いそうもない。



「…青峰君は何か用事があるの?」

「追試補習と部活。いや本当はお前みたいなひ弱な女子に頼みたくねぇけど、」

「いや私バレー部に入ってるよ」



ひ弱って。帰宅部に比べれば体力はあるよ!そんなことも知らないのか。まあ普通は知らんがな。ただのクラスメイトだしね。

暫く青峰君は私を一瞥して言った。






「…お前、俺に興味ねーだろ。だからだよ」


「は?」

「あ?違えよ、ほら女ってうるせえじゃん。話しかけられたら直ぐに勘違いするし。…けどお前は違う、ような。人に流されたりしないし、自分をしっかり持ってるだろうし。(…何言ってんだろ、俺。)要は!お前に任せたかった、そんだけだ。パシリだと思うなら借りは返すから」





どさくさに紛れて凄い発言をされたような気がする。私のことを知ってた?青峰君顔が赤黒い。元が黒いから更に…。私は私を持ってるってどんな観察力よ。さすがにそんな意識しなかったわ。




「思わないよ。わざわざ言ってくれたことだけで充分。はい、任されました」



何だか青峰君が小さな男の子にみえる。可愛くて素直で。よく気力が足りないとか先輩に言われてるけど、この青峰君は好きだ。そしてにこり、と音がつくように笑えば青峰君は途端に顔を反らした。





「あのなぁ、そうやって男に向かって笑うのよくねーぞ。勘違いするだろが」





今日一日だけで一気に青峰君に近付けた。だって今、こんなにも近い。教室の教壇の上にいる私と机の上に座った青峰君だったのに。いつの間にか立ち上がった青峰君は教卓に肘をつき私と同じ目線に立つ。狙ってるのかなこれ。

ついついその言葉に乗せられたか、調子に乗った発言をしてしまったのだ。





「勘違いさせたのは、そっちでしょ?」




私のことよく知ってるじゃない。


すると青峰君は小さくため息をつき私の顎に手を添えた。そして唇が合わさるかと緊張と不安で黙っていたら、くつくつ笑って何もしねえよと笑われた。












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