さて最近のことをお話しましょうか。まさかキセキの世代の半分と接触するとは思わなかった。黒子くんに黄瀬くんに青峰くん。それに赤司くんもだ。関わりたくはないが。ほとんどというべきか、改めて凄い人達と関わりを持っているんだなと思い知った。

彼らの取り巻きがイレギュラーを許すはずがない。そう俗にいうわたしは呼び出しをされ今女子に囲まれているのだ。彼女たちの目が怖い。だからといって怯むわけがない。こんなの赤司くんに比べれば全然怖くない。





「何の用ですか」

「言わないとわからないわけ?乏しい頭ね。自分で考えなさいよ!」



とっくに出てるけどね。一応の再確認ってことをわかってほしい。どうせ、貴方達の思うことなんてひとつだ。




「アンタ生意気なのよ!赤司くんにも反抗したり黄瀬くんにも近付いて。身の程を知りなさいよ!泣けば誰か寄ってくるとでも思ってるの!?」


ほら、予想通りだ。名前は表情には出さないものの内心ほくそ笑んでいた。



アンタなんかいなくなればいいのよ。


さすがにこの言葉は効いた。どうしてわたしだけなのか。
逆に怒りたい。おかしいと思わないの?学校の方針が赤司に握られ掌の上で転がされている私たちを。先生さえも太刀打ちできない権力を中学生が持っているなんて。そんなのおかしい。少なくとも正しいと思ってることをやってるだけなんだよ。ほら自由にしていたい人だっている。わたしには味方がいるんだから。貴方たちがいってる黄瀬だって、普通に接すれば友達になってくれるし黒子くんだって優しい。青峰くんは相談をきいてくれるし。外見で騒いでる貴方たちとは違うんだよ。

それに、わたしは泣いてなんか。



「いなくなればいい?それは逃げることになる。わたしは逃げたくない!立ち向かって最後まで足掻いてやる。何と言われようがこうやって呼び出されようがわたしは退かない!絶対、…絶対諦めてたまるか…!(わたしだけなんだ。わたししか、いない。そうだ。助けなきゃ、)」


「…何言ってんの、頭おかしいのはどっちよ」

「貴方だっていつかはわかる。赤司がどれだけ狂っているか」

「…、馬鹿ね。後悔したって知らないんだから」


気迫に押されたのか彼女らは去っていた。でもきっとどこかで期待しているかもしれない。赤司を彼女が変えてくれるのを。それをうまく言えないのだ。言ったら排除される。だから嫉妬でしか彼女を怒れない。これしかない、これでいい。

正直、すっきりした。また来るかもしれないけど。自分の気持ちを素直に言えるのはいい。少し違う思いがあったのには驚いた。わたしは、赤司くんを助けたい?




わたしに出来ることは何もない。かといって無力でもないと思う。現に赤司くんはわたしを退学させようとしない。何でかはわからない。彼なりの意図があるのか。







「名前さん、大きな声が聞こえたんですが大丈夫ですか?」

「黒子くん…びっくりさせちゃったね」



中庭のベンチで読書をしていた黒子くんは影の薄さからか取り巻きにも気付かれなかった。それにしても聞かれていたか。
迷惑かけてごめんね、謝ろうとしたのを彼は遮った。



「謝らないで下さい。僕なりに名前さんの力になりたいだけですし。僕がやりたいようにやってるだけです。それに迷惑なんかじゃありません。むしろ感謝してるんですよ。名前さんが諦めないでいてくれることに。だから、ありがとうございます」



嬉しかった。彼はどこまで優しいの。微笑む姿も頭を撫でてくれる所作も全部。甘えてしまいたい。黒子くんに甘えることが出来たら、わたしはきっと此処からいなくなる。






もし泣きついたら黒子くんはどう思うんだろう。青峰くんにも弱音は言ってるが一番近い存在の彼はわたしに何と言うのだろう。すがり付いて泣きたい。わたしは弱い。すぐにこうなる。どうも優しすぎるからだ。何もかもをも受け止めるからだ。




「…名前さんは、自分をそんなに責めなくてもいいんですよ。あとたまには甘えたっていいんです。貴方はメリハリがあるから僕に甘えてもすぐに立ち直るだろうから。……今日くらいいいんです、――名前」


「…今っ、…え?」



飛び込むつもりなんて無かったのに。名前を呼ばれたと同時に黒子くんに引っ張られて胸に飛び込んでしまった。なんてことだ。凭れていると心音が聞こえた。すごく早い。そしてぎゅ、と腰辺りに腕を回された。



「く、くろこ…くん?」

「…名前で呼んで下さい」



また強くなる腕の力。わたしも抱き締めようかな。弱々しく黒子くんの背中のブレザーを掴む。



「…!」

「…、テツヤくん」


「…はい」

「テツヤくん」

「はい」



何度も何度も名前を呼ぶ。抱きしめあう。ああ、やっぱり誰かがいてくれるからこそ人は成り立つんだ。それが黒子くんでも、黄瀬くんでも、わたしは。




「わたしからも、ありがとう」



少しは立ち直れたかななんて。

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