この学校は彼が絶対だった
彼が王様だった
誰も逆らうことなく従っていた
逆らう者には容赦はしない。全て赤司君が正しいと。まるでどこかの独裁主義者だ。そんな彼には部活の仲間がいた。勝ちにこだわる有名な帝光バスケ部。一人一人の勝利への執着は半端ないものだ。特に赤司くんは。どこまでも勝ちを当たり前だと思っている。彼曰く「全てに勝つ僕は全てに正しい」と。そんなの歪んだ考えだ。ひねくれ者だ。
負かしてやりたいのに、どうしてもできなかった。バスケは勿論、勉学も敵わなかった。努力している姿なんて見ないのに。赤司くんはどこで何を思って生きているのだろうか。
赤司征十郎という人は、負を知らない
だったらわたしが唯一できるのは彼に従わないこと。生徒会長だからって色々権力行使してるみたいだけどわたしはそう簡単には思い通りにはさせない。反抗してやる。議案会議などでは要望をこれでもかと出してやり、困らせようとした。それを難なくこなす赤司くん。失敗だった。他には何かないかと、本を読んだりしてたら黒子テツヤ君と友達になった。赤司くんと同じバスケ部のテツヤ君もあまり彼をよく思っていないようだ。
嫌がらせのつもりでやったわけじゃない。ただわかってほしかった。全て正しいのは君じゃないと。
「馬鹿みたい、一人で抗うなんて」
「何ー?また赤司くんのこと?諦めなよ名前に勝ち目ないって」
「そういうあんたは従ってるだけで楽だよねー」
昼休みのランチタイムで少し本音をこぼしてみた。したら、勝ち目ないとか言われたからちょっとムカついた。何でみんなホイホイ彼に従うのかがわからない。噂によると鋏を持ち歩いてるとかないとか。これが脅しの道具なのね、なるほど。
「ていうか、今月の雑誌みた?黄瀬君がかっこよすぎて2冊買っちゃったんだ〜」
このこ、赤司様はどうした。黄瀬、涼太。確かモデルやってんだっけ。嫌だなあ。カメラに向けてるとわかってても貼り付いてる。キセキの世代ではテツヤ君が一番だな。
「…こっちのがいい」
そういって指さしたのは、カメラ目線じゃない友人と談笑してる姿。多分相手には聞こえてない。
赤司くんのことは忘れかけていたある日。天気予報は大外れの大雨。それなりの女子力はあるので折り畳み傘は常備していた。っていっても家から学校はまあまあ近いから走って帰ってもあんまり変わらないんだけどね。玄関で靴を履き替え傘を出した。校門の近くに黒いタオルを被った人がいたから、困ってる人は助けよう!というモットーのもと顔も見ずその人に傘を貸したのだ。わたしいい人!
「…、」
「あの、よかったら使ってください…!」
お辞儀してその場を走り去った。一日一善、完了。のち後悔。わたしは知らなかったのだ、その人が赤い髪だったのを。
それが赤司征十郎だったのを。