「じゃあチャイナ、ケーバンとアド教えろ」


初めはそんなもんだと思ってたけど…


「次移動教室でさァ。行くぞ」


「チャイナァ。早く帰ろうぜィ」


「チャイナ、昼屋上で食うから」


「チャイナ、買いたい物あるからスーパー寄ろうぜィ。酢昆布買ってやらァ」


「チャイナ土曜日空いてるかィ?」


あれ以来サドとこんな仲良くなった…のか?

あんまりサド以外の人と話してない。でも短い期間なのにすごく友達っぽい。


私たちって喧嘩しなければすごく仲がいいみたい。


でも周りからは誤解されがちで女子に呼び出されてサドのことを聞かれることが多くなった。噂にもなってしまった。そんなにカレカノに見えるのか?


「みんな男女が仲いいだけで単純アル」


確かに告白されたけど、今思うと冗談かなぜだか知らんが'Like'の意味の告白だったのではと思う。


「…そうだねィ」


少しの間があってから隣の返事した。

気になってこっそり顔を覗くと少し不服そうにみえた。


「サドからもなんか言ってやるヨロシ!呼び出されるのもう嫌ネ!」


「…チャイナなんか忘れてねェ?」


「?何が」


「なんで俺がんなこと言わないといけねェんでさァ」


なっ!
どういうことアルか!


「嫌じゃないのかヨ!勝手に噂されて!」


「確かに勝手に噂されるのは気に食わねェ。けどよ…」


そこで一息おいてサドは言った。
私もすっかり忘れていた。


「俺ァアンタのことが好きなんですぜィ?その噂でチャイナに余計な虫がつかねェってんなら喜んで肯定しまさァ」


誰もいない放課後の教室。

外の蝉の音がいやに大きく聞こえた。サドはあのときと同じように真剣な顔で笑い飛ばすことができなかった。


「サド、」


「チャイナはどうなんでィ。普通友達からって台詞は付き合ってるようなもんって知ってるかィ?」


「えっ!そうなのかヨ!」


「やっぱりな…」


ハァ…と溜め息をつかれると無知な自分が恥ずかしくてサドに対して申し訳ない気持ちになる。


「ごめんアル…」


「それはいい。チャイナは、俺のこと嫌いか?」


言葉に詰まった。

サドが辛そうな表情をするものだから、こっちまで泣きそうになる。
胸の中がごちゃごちゃしてここから逃げ去りたかった。


「…サド、少し待って欲しいアル」


私はそう言って椅子から立ち上がるとサドに背を向けて教室を出た。

そのときサドはどんな表情だったのだろう。


それから家では頭からそのことが離れなかった。

前は適当にはぐらかしちゃってちゃんと返事をしなかった。
でもそれはよくないんだと気付いた。


私はただサドに甘えてたんだ。



********



「で?返事はどうなんですかィ?」


サドは少し怒っているようにも見えた。

でも怯まないでサドを見据える。


「私ネ、サド…」


ホントは気付いてた。

サドの言葉も覚えてた。でも変わることが怖くて。私の心は決まってたのに、それを肯定してしまうと今までの私たちはどうなるんだろうって怖くて。


「私サドのこと好きアル!」


もしかしたら私は少し言うのが遅かったかもしれない。

サドにはもうこの気持ちは届かないかもしれない、手遅れかもしれない。


それでも言うことができた。

罵倒を浴びるくらい覚悟はしている。ぎゅっと目を瞑って制服の裾を握っていると、ふわりと抱きつかれた感触。

驚いて目をぱちぱち瞬きさせる。


「マジビビった…」


ぎゅっとサドの腕に力がこもった。


「ごめんアル…中途半端なことして」


「全くでィ。でもまァ晴れて付き合うことになったし許してやらァ」


サドの声を聞いてるうちに抱きつかれてるのが恥ずかしくなってきた…


「ちょ…サド、離すヨロシ」


「…まだ『サド』?」


「うっ!」


痛いところをつかれた。

確かに彼氏にサド呼びは酷いとは思うけど…


「お、おきた…」


「…今はそれで勘弁やるけど、ゆくゆくは名前で」


「はい…」


すごく心臓がばくばくしてて、でも嬉しくて、思いが通じるとこんなに幸せなのかと柄にもなく思ってしまう。


突っぱねるのもやめて沖田の胸に顔を埋めた。


「ていうか他の男の名前呼ぶの禁止。あとやたらとべたべたしない。特に銀八。それと俺からあんま離れるな。」


「…え?」


「それから最初と最後のあいさつは俺にするのと、あ、それと告白されたら俺と付き合ってるって言えよ。こっぴどくふれ。」


「えーと…どういう意味アル?」


私はつらつら並べられる言葉を理解できなかった。

一つ一つ意味を考えてみたら、


「私が、アルか?」


「…他に何があるんだよ」


当然だと言う風に言い切られてしまって、ボケることもできない。
戸惑って無言でいると沖田は呆れて盛大に溜め息をはいた。


「俺ァお前を他の野郎に触らせたくないんでィ。本当は半径5m以内には俺以外の男は寄せつけたくないんだぜィ?」


「不可能ダロッ!」


「そういうと思ったから譲歩してやってんでさァ」


「譲歩って…あれでカ!?」


「〜ッッ!それほどお前に惚れてるってことでィ!分かれ馬鹿チャイナ!!」


「!」


「これで分かったかよ」


「…少しは」




距離感が分からない分の難題


(やっぱり実感わかないネ)





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