「おー神楽、今日はずいぶんと余裕のある登校だな」

初めに聞いたのが銀ちゃんで少し安心する。

「私だってやればできるアル」

「ならいつもできる子でいてくれや」

自分の席…とういうより隣を見てみると、もうサドは来ていた。ほおずえをついて眠たそうにボーっとしている。

いつもと変わった様子はないけど気まずい感じで静かに座る。

「オイ」

びくう!

「ななな、なに!!?」

「驚きすぎだろィ。なんで今日は早ェの?」

「さ、さぁ〜」

「昨日はよく眠れたかィ?」

「!!」

わざと逸らしていたけど驚いて振り返ってしまうと、サドはいつも通りの黒い笑みを浮かべていた。

「なに言って…!」

いつもなら軽くあしらうか、殴りかかるけど、焦りすぎてバレバレなことに気付く。

「プッ、そんな気にしてんのかィ」

「〜っ!!」

真剣に考えてた私がただの馬鹿アル!

「違うアル!冗談だってのは分かってるネ!」

「…」

慌てて言い返したこの言葉は説得力皆無…だと思っていたら途端にサドが無表情になった。

「え?どうしたアルか?」

あたふたしていると急に真剣な表情で私をじっと見つめてきた。
うっと言葉に詰まる。

「言っておくけどな嘘じゃねェから」

なんだその真面目な顔は!
いつもはもっと冗談めかして言ってるじゃねえかヨ!

思わず足が動き勝手に屋上に向かっていた。

(なにアルか〜!なんでそんなにも急に真剣な感じになっちゃうネ!!)

ハァっとため息をついてボーッとしていると、屋上の扉が開いた。

誰かな?と見てみると、ホントに知らない人が来ていた。

見た感じは真面目で頭のよさそうな感じなのに、屋上にサボりにでもきていたのだろうか。

マジマジと見ていると相手も私に気付いてなぜか一瞬で顔を赤くした。

「神楽さん!」

え?私?

「は、はい…?」

突然のことに頭がついていけない。

「僕と…付き合ってください!」

私に頭勢いよく頭を下げてきたけど…
これって、いわゆる、告白?

これが普通の告白だよナ!アイツで2回目なんだけど、気分的には初めて告白されたように思える。

「わ、私アルか…?」

「はいっ!」

「なんで私を…」

「神楽さんすごく明るいし、活き活きとした表情が素敵で!特に笑顔に可愛らしい人だなと思ってたら好きになってて…!」

必死に伝えようとするその人は本気なんだと確信できた。

すごく嬉しい…。

私のそういうところを見てくれていたってことが。
柄にもなく付き合っちゃおうかなんて考えがよぎった。

…でも、

「私は…」

答えを伝えようとした時にギギィ…と古びた音をたてて屋上の扉が開いた。

二人とも驚いて扉に視線を動かすと、来たのはサドだった。

呆然としていると若干眉根を寄せて私を睨みながら、つかつかとこっちに近づいてきた。

そして私を後ろから抱きしめ男の子の方に向き直る。

「コイツ俺のなんでさァ。悪いけど、諦めてくんね?」

「えええええ」

私が制止の声をあげようとするけど男の子の方が少しはやかった。

「…そうですか。彼氏がいたなんて知りませんでした。気持ちを聞いてくれただけでよかったんです。ありがとうございました。お幸せに」

「…ちょ、待っ…!」

ぺこりとお辞儀をしてそそくさと屋上から出ていってしまった。弁解の余地すらなかった…。

「サドっっ!何するアルか!」

「何って…断わってあげたんじゃねェかィ。それとも付き合うつもりだったのか?」

「断るつもりだったけど…」

「じゃあいいだろィ」

むうっ
そういう問題じゃない

「よくないネ!あんな誤解されるような言い方!しかも私はお前のじゃないアル!!」

「いーや、チャイナはもう俺のでさァ。誰にも渡さねェ」

「んなな…!だからそういうことを…」

「…ていうか、チャイナがアイツに告られて嬉しそうな顔をしてるからだろィ」

「え」

いきなりサドの声色が変わった

「あの調子だとお前告白受けそうだったから焦ったんでィ!」

「え、え、えええ!!」

サドがこんなに表情を崩したの初めて見たアル!
私には戸惑うしかできなかった。

「俺のときはあんな顔しなかったのによォ。つーかさァ俺が先に告白してんのに…で?どうなんだよ俺のことは」

サドが詰め寄って来て、私は何も言えず後ずさり壁にまで追いやられた。

「えぅ…その…」

「なに」

「好きって…言われても、分かんないネ…だから、友達からとか……」

すると、サドは少し考えてからにこりと笑った。

「いいぜィ」

「ほ、ホントアルか!」

「あぁ、これからよろしく」

サドのことだから今すぐ言えというと思ったけど…
案外優しいやつネ!!

しかし私は忘れていた
サドがこうやってにこりと笑う時は何か企んでいるときだということを。









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