※幼馴染設定









いつも隣にいることが当たり前だった。


神楽。
俺の幼馴染。


いつも俺たちは隣にいた。


いつまでも俺たちは隣にいて。
それが当たり前なんだ。




でも中学生の頃に気づいた。

俺のこの想いは、ただの幼馴染にだく感情じゃないことに。



********



「総悟!ねぇねぇ、早く帰ってドラマの続き見ようヨ!」

「へーへー」

最近総悟の様子がおかしい気がする。

少しなんだけど素っ気なくなって、私はそれがなんか呆れられてるような、煩わしく思われてるような。
そんな感じがしてならない。


姐御に教えられた。

私は総悟が好きなんだって。
その言葉は私には何の違和感も与えなかった。


そうだったんだー。

違和感はなかったものの、初めは他人事みたい。けどそのうちに本当に恋が分かってきた。


自覚すると新鮮な気持ちでいっぱい。総悟の隣にいるのは私だなーんて優越感もあっ
たし、何より総悟といるだけで幸せだった。

けど、それと同時に分かったのは黒い感情。

総悟はモテる。
総悟が告白されてるの見ると、黒い黒い感情が沸き立ってきて怖かった。


総悟は私のじゃないんだ。
いつかは私の隣ではなくなって、総悟の隣も違う人になる時が来るんだ。

「神楽?何ボーッと突っ立ってんでィ。早く帰るんだろィ?」

あ、考え込んじゃってたアル。
私は総悟の顔をじーっと見てみた。

「どうしたんでィ?」

私もそろそろ総悟を離さないといけないアルか?


「・・・総悟。今日はやっぱり一緒に帰らないアル!お前はうららちゃん とでも帰るヨロシ!ほら、ちょうどそこにいるし!!」

「ハァ?なんで!?」

総悟の驚いたような顔、久しぶりに見たかも。

総悟はうららちゃんが好き。っていう噂。

私もそう思う。前に総悟はうららちゃんのことを嬉しそうに私に話してた。うららちゃんはMだそうな。相性ピッタリっぽいネ。

「私用事思い出したアル!ちょっくら銀ちゃんとこ行ってくるネ!」

「・・・今日だけな。明日はうちにきて一緒にドラマ見ようぜィ」

「うん・・・」

今、私ちゃんと笑えてるアルか?


総悟とわかれた後、銀ちゃんがいるであろう職員室にダッシュで向かった。

さっきにもただに口実だし、特に用事があるわけじゃないけど、このもやもやした気持ちを銀ちゃんとこにいって消し去りたい。


職員室に行くと案の定、銀ちゃんがいた。

「お、神楽?どうした?」

「別に何もないアル!」

私は強い口調で言いながら銀ちゃんの方に行って抱きしめる。

銀ちゃんの匂いは落ち着く。
精神安定剤みたい。

「銀ちゃん、頭撫でるヨロシ!!」

「はいはい」

銀ちゃんは呆れつつもくしゃくしゃと撫でてくれた。

「神楽。自分に素直になったほうがいいんじゃねぇ?」

「・・・」

私が黙るとそれ以上は何も言わずに子供をあやすみたいに頭を撫でててくれた。

次に好きなひとができるとしたら銀ちゃんみたいな人がいいナ・・・。



********



俺は今一人で家路についている。
1人で帰るの久しぶりだ。だから悶々と考え込んでしまう。

さっきのうんと言ったときの神楽の顔が頭から離れない。
悲しげに無理に笑ったその表情。

一体神楽はどうしたんだ?

神楽は嘘をつくのが下手だ。
多分用事っていうのも嘘だろう。

銀八の所になんか行かないで俺の隣にいりゃあいいのに。
用事がないとしたら、一体何してんだよ。

俺でも簡単に抱きついたりしないくせに、銀八には『銀ちゃん銀ちゃん』って懐く。
俺だけに心許してりゃ十分。他に男なんかいらない。


最近妙に神楽を意識しちまう。
可愛くって可愛くって仕方なくて、俺だけのモンに早くなっちまえばいいのに・・・。


ふと下を見てみると、前に降ったときの大雪が未だに家の影にちらほらと残っていた。

・・・よし、決めた。





脱幼馴染み

その暁には銀八には近づかせねェ!




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