ひた隠した悋気【前編】
それは確か私がモデル業、少し俳優業と広く仕事を貰い出した頃。
まだ肌寒い春。
所謂芸能人なのに、やっぱり花の高校生。
いろいろあって私にも彼氏ができました。
彼…こと、総悟さんは22歳。大して私は16歳。
年に差があるわけで私はいつもリードされることが多い。
総悟さんはかっこいいのはもちろんだけど、その上落ち着いていて優しくて、頭もいい。
たまに私みたいなちんちくりんでいいのかなって思っちゃうけど、大切にされてるのはよく分かってる。
惚れ込んでしまってるのは私の方なんだけどネ。
でも我が儘は言わない。
大学のことは私はよく知らないけどきっと忙しいんだろうな、と思うとなかなか私が休日の時も誘えない。
最近も2週間くらい会ってなくて…
きっと、私ばっかり寂しいんだ。
あーあ、明日休みなんだし、会えないかナ。
今日は帰りが7時になってしまった。
とりあえずご飯食べて総悟さんを誘うかは後で決めよう。
鍵を開け、中に入ると部屋の明かりがついていた。
え…ど、泥棒!?
しかしすぐにホッと安心する。
「神楽、お帰り。仕事お疲れ様」
「総悟さん!」
お互いの合鍵は交換してあるから不思議はないんだけど…
「ど、どうしたアルか?」
「どうしたって、最近会えてなかったじゃん」
もう…
総悟さんがこういうとこするから私ばっかり好きになってしまうんだ。
「夕食食べたかィ?」
「まだアル。総悟さんは?」
「俺もまだなんだよねィ」
「私作りましょうか?」
「んー。神楽の手料理食べたいのも山々なんだけど疲れてねェの?俺が作ろうか?」
!!
そ、総悟さんの手作り…!?
「…やっぱりすごく疲れたしお風呂に入りたいのでお願いしたいアル」
「任せとけィ。あ、お湯沸かしといたから」
「! ありがとうございますアル!」
寒いけどシャワーで済まそうかと思っていたんだけど、よかった。
「冷蔵庫とさっき買ってきたものが袋にあるから、適当に使っていいアルヨ!」
「了解」
「じゃあ、お風呂行ってくるネ!」
総悟さんは立ち上がり、私のこめかみにちゅ、と軽くキスを落とした。
「ゆっくりしてきなァ」
突然のことに固まる私を他所に沖田さんは台所の方へ。
「は、はい…」
夢心地のままふらふらと私はバスルームに向かった。
ちゃぷんとお湯に浸かり、暖かさを肌に感じつつ、私はまだドキドキと胸を高鳴らせていた。
そ、総悟さんって絶対たらしアル。
そりゃあ、あんな容姿なら経験も人一倍あるんだろうけど……
妬いてしまう。
駄目駄目!総悟さんに並べるようにちょっとは大人の女性になるんだから!!
ザブン、とお湯の中に全身を沈めたのであった。
バスルームから出ると、ちょうどいいくらいにテーブルに夕食が並んでいた。
「お、おおおお!こ、これは……」
見た目だけ見ると料理もかなり綺麗アル……
「神楽よく食うだろ?ちょっと多かったかィ?」
「これくらい楽勝ネ!」
「そりゃよかった」
「ねえねえ!早く食べたいアル!」
「ちょっと落ち着きなせィ」
二人、向かい合わせに座っていただきますをした。
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