油断させない

「チャイナ」

「ん?……ひゃあッ!ど、どこ触って…!」

「いい反応だねィ」


次の日になると、なんとなくチャイナとの距離が遠い気がしたので、ちょっと触ってみた。

怒られたけど満更でもない様子に、ちょっとクセになった。



油断させない



「チャイナ、おはよう」

「…おはよ」

俺から目を逸らし、平然としようとしてるのが見てとれた。

歩調を速めて離れようとするので、チャイナの小さいお尻を撫でた。

「ひっ…!」

びくりと肩が跳ねる。

「お、おま…今……!」

勢いよく振り返ると真っ赤な表情で掴みかかってきた。

襟を揺さぶられながら答える。

「いいケツしてんねィ」

「お!お前…!昨日から何してくれちゃってるアルか!?おっさんかヨ!セクハラをやめるヨロシ!」

「ええー」

「おい!!」

廊下にある時計を指差して言った。

「そんなことよりけっこう遅刻だぜィ?」

「あぁ!っ…今は勘弁してやるネ!覚えてるヨロシ!」

チャイナは走りだしたので、俺もそれについていく。

「お前は歩いてロ!」

「いや、俺も遅れんの嫌だし」


二人で走って、ガラリと戸を開けた。
そこには着席した生徒と銀八がいた。

「はあー。ギリギリアル」

「いや、お前ら完全な遅刻な。もう1限目始まるぞ」

「ええー!」

「さっさと席つけ」

あらら。
どうやら完全にアウトのようだ。

「もう!お前のせいで怒られたアル!」

「既に遅刻だっただろィ」

席について教科書を机に置くが、隣のチャイナは鞄を漁って困り顔。

「……せ、せんせー。教科書忘れましたアル…」

「なら隣に見せてもらいなさーい」

チャイナはちらりと俺を見ると、気まずそうな笑顔を俺に向けた。

「サド?教科書見せて欲しいナ?」

まあ、ここでちょっと虐めてもいいんだけど、

「いいぜィ」

素直に頷いたのに驚いたようで、嬉しそうに机をくっつけた。

「ありがと!」

ああ、やば。
チャイナが近い。なんかいい匂いする。髪の毛さらさら。

「…ガンつけるのやめるヨロシ」

「自意識過剰ですぜ」

「………」

目ェでけえなァ。しかもくりくりしてらァ。
少し汗ばんだ肌が艶かしい。

ただ、チャイナは一生懸命教科書を見つめて、俺なんか眼中に無いようだ。

「チャイナ」

小声で呼んでも、突ついても無視。
それがやっぱり気に食わない。

下の方に手を伸ばした。

「…っ!!?」

チャイナの太腿を軽く撫でていると、がしりと手を掴まれて真っ赤な顔で睨まれた。

「何すんでィ」

「いやいやいや!なんでこっちが文句言われないといけないアルか!!」

至極正論であることは無視して。

「柔らかそうだなと思って」

「お前は本能でしか動けないアルか!」

チャイナがこっちを向いたことに満足感。
授業中なので大きな声は出せないが、顔を見るだけで分かるくらい相当ご立腹だ。


案の定、終了のチャイムとともに拳が飛んできた。
予想通りすぎて簡単躱せたが。



俺に構うチャイナにますます気分が良くなって御構い無しに触りまくった。




放課後。

鞄を片手に自然とあいつを探していた時。


もう帰ったのかと諦めていたそこにばったりと出会った。

「まだいたアルかこの変態!」

職員室を出たすぐの所だ。

「失礼な言い草ですねィ」

「近づくナ!」

「なんでだよ」

じりじりと寄るとその分じりじりと後退した。

鋭い眼光が、警戒心剥き出しであることを物語っている。

「なんで残ってたんでィ?」

「銀ちゃんに頼まれたアル!遅刻したんだからこれくらい運べってヨ。あの馬鹿天パ、お前には何も言わなかったのに」

「てめえは常習犯だからだろうが」

むすっとして俺の前を通り過ぎようとした。


挑発したのに、喧嘩を買うわけどもなく俺を避ける。

なんで、今日ずっと構ってんのに、こっちを向かないんだろう。


そう思うとすぐにチャイナに近寄って腕を掴み、頬にちゅっと口付けた。

「ふぎゃ!?」

飛び上がると、俺に拳を奮ったがすぐさま後ろに退いて避けた。

相変わらず毎度毎度いい反応をしてくる。

「こ、この野郎…!油断も隙もあったもんじゃないネ!私本気で怒ってるアル!」

「へー」

適当に返事を返したが、ちゃんとチャイナの顔を見た。

涙を浮かべて真っ赤に火照らせた顔。しかし恥じらいといった類いのものではなく、怒りに打ち震えているようであった。

少しばかりやり過ぎたか。

「…そんなに嫌だった?」

「違う!」

「…じゃあ俺のこと嫌い?」

「そういうんじゃないアル!!」

え、違うの?

ホッとしたが、また逆にそれ以外に何があるのかと訝しむ。

「お前…そういう変なコト、誰にでもするアルか……?」

「は?」

「あのセクハラ行為の数々アル!」

誰にでも?

俺が口を開く前にキッと睨まれ、怯んでいるとチャイナは肩を落とした。

「…やっぱりそうアルか。どうせそんなことだとは思ってたけど。お前のことだもん」

は?いやいや。

「こんなん誰にでもやってたら流石の俺でも捕まらァ」

「いやらしくもうまくやるのがお前アル。だから一応相手は自分に気がある子とかにしてんダロ」

なんだよその痴漢魔。
んなわけないだろう、普通。

…ん?今、聞き捨てならないことを聞いたような。

「だからってお前にその気はないのにベタベタ触るのは「ちょっと待て」

「なんだヨくそサド」

「お前、俺に気があんの?」

「そりゃ………………あ」

みるみるうちに真っ赤にさせ、眉を吊り上げてぶんぶんと首を振るが…
どう見ても図星である。

「ちっがうアル!さっきのは言葉の綾ネ!!」

「ふーん。そっか。俺に気があんのか。ふーん」

「馬鹿!最低男!悪魔!ちょっと顔がいいからって調子乗りやがって!!」

ポカポカと可愛らしい攻撃がくるのかと思いきや、腹に一発重いパンチが繰り出された。

「っぐふ…!お、おま…加減覚えろィ……」

「わざとアル」

ふん、と鼻を鳴らすと振り返って、今度こそ去ろうとするので慌てて腕を掴む。

「おいおい、まだ話は終わってないだろうが」

「な、なにヨ。要するにもうセクハラやめろっていう……」

「チャイナは俺に気があるんだよな?」

「だから違うっつってんダロ!もうその話はしつこいア「俺もでさァ」

チャイナに言葉は続かせないよう、わざと被せてやった。

チャイナは眉を顰めて怪訝な顔。

「はぁ?何が?」

「俺もチャイナに気がある…ていうより、好きでさァ」

そうそう。元はといえば俺って、チャイナに構って欲しくていろいろしてたんだっけ。

「…へ?」

「だから、てめえのことが好き「も、もういいネ!お前が私を好き!?へ、へへ変な冗談はやめるヨロシ!私には通じないアルヨ!あ、あはははは…」

茶化そうとするものの、俺を見ると段々としりすぼみになる笑い声。

どうしていいか分からない、というように視線を泳がせた。

「チャイナは好きじゃないの?俺のこと」

「セクハラばっかりする男なんて好きなわけないアル」

「人聞きの悪ィこと言うなよ。チャイナにしかしてねェや。他の女にやったところで面白くもなんともないし」

「……そういうことを言ってるんじゃ…」

真っ赤なくせに、よく言う。

「で、どうなの?俺はフラれたのかィ?」

「……それは、その…」

「好きなくせに」

「……」

おろおろとして、それから俯いて黙りこくった。

「沈黙は肯定と受け取るぜィ」

「…勝手にしろヨ」

「素直じゃねーの」

だけどそんなところも可愛い。
指を絡ませ、手を繋ぐ。


「お前の感情表現の仕方が最低だからアル!」

「だってチャイナの反応が可愛くて、つい」

「おだてて済むと思うなヨ」

「ごめん」

「あれ、あっさりアルな」

「だっていらん誤解されたくないし。ちゃんと好きだから」

「……お前、そんなんなら元からそうしてて欲しかったネ」

「ごめんって。悪かった」

「分かればよろしい」

「ふっ」

不意にチャイナの唇に触れるだけのキスを落とすと、ぱくぱくと口を開閉させた。

「お、おお、お前…!言ったそばから……!」

「いいじゃん恋人なんだし」

「じゃあその前に言えヨ!!」

「やっぱ、かわい」

「〜っ!…もう!馬鹿!」

「ははは」






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なかなか迷ってしまった結果、警察沙汰並みのセクハラ男にしてしまいました。
内容はお任せとのことだったのですがこんな残念なものとなってしまいました。如何でしょうか?

詩織様のみ加筆、修正、書き直し承ります。
お気軽にお申し付けください!

リクエストありがとうございました。








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