だが考えは甘かった。

何も変わらなかった。
次の日からまたチャイナは元通り。

「やいサド男!今日こそ決着つけてやるネ!」

どっかの雑魚が使いそうな台詞で公園にやってくるのが最近のチャイナ。

こっちとしてはもう少しくらいは色気のある展開を望んでいるのだが、そんな思いとは裏腹に近頃は毎日喧嘩を吹っ掛けてくる。

喧嘩とかもういい。
うんざりしててもチャイナに関してだけは残念ながらチキンな俺は結局のところその誘いに乗るしかない。

「へっ、それはこっちの台詞でさァ」

いーや。もういい、もういい。したくない。いや喧嘩は楽しいけど…
ちょっと前はいい感じだったのに。

―やはり俺はこのままヘタレなのか。

思う存分暴れた俺たちは経緯は覚えてないが河原に移動していた。
疲れて川の近くの土手に二人で仰向けに寝転がる。

「空が…青いアル」
「そうだねィ」

喧嘩した後でたまにある、このほのぼのした時間が好きだ。
幸せを噛み締めるこの時間。

思えば、チャイナといると人を斬って憂鬱な時でも心が穏やかになった。
あァ、俺は本当にものすごくチャイナを必要としてるんだ。

そう思うと不思議と何も怖くなくなった。

「おいチャイナ」
「何ネ」
「今日も決着はつかなかったなァ」
「そうアルな」
「そんなことどうでもいい」
「へ?」
「知ってるかィ?俺がお前をどんな目で見てるのか」
「それはライバル?嫌いな奴?」
「残念ながら大ハズレ」

チャイナのいる向きにごろりと寝返りをうった。視点を空からチャイナに変える。

「何が言いたいネ」

訝しげな表情ではあるのだが、少し動揺の色が見え隠れしてる。

「チャイナ…」

それでも仰向けのチャイナ。

絶好のチャンス。予期できていないチャイナに馬乗りになる。

「意味不明アル!」

精一杯の虚勢など鼻で笑い、頭がやられてしまった俺に恐れなどない。

ちゅっ、と音を立てて額や頬に触れる程度のキスを落とす。

「!?にぎゃああああああッッ」

女とは思えない叫び声だがS心がくすぐられる。
なんかしてみるとどうってことない。
可愛過ぎるんでィ!!

「チャイナ…好きだ」
「んなぁっ…!」

驚いている隙にまた額に掠めるだけのキスを落とすと、状況を理解したで

あろうチャイナは一気に真っ赤になる。

「どうなの?」
「どうって…!?」
「いや、そのままの意味だけど?」
「だからそれが…」
「好きだっつってんの」

困惑しつつも、精一杯の強がりなのか真っ赤なまま睨みつけてくるが、全く怖くない。

「嘘も程々にするヨロシィ!!」

勢いよく俺を突き飛ばしれ走り去るチャイナ。

「待てよっ!!」

せっかくのチャンスだ。逃がしはしないっ!
だが、流石夜兎なだけあって速過ぎ。もう見失ってしまった。

「クソ……」

アイツがいそうなところをしらみつぶしにまわる。
が、いない。

こうなると、あの後直帰したってことか?
急いで万屋に向かった。


********


インターホンが鳴った。

全速力で逃げてきたところが万屋なので、すぐにバレたのかも…。
だがそこまでしつこいだろうか?

銀ちゃんが向かったので、私は静かに玄関に耳を立てる。

「あり?総一郎君じゃん。どしたの?」

ぎゃああああ!まさか、ホントに…!?

「旦那、チャイナいますかィ?」

うわわわわ…!逃げなきゃ!

「おい新八ぃ!隠れるからお前はサドに、私は出てったって言うヨロシィ!!」
「えっ!なんで?!」
「いいから「何騒いでんだィ?」

ぎょああああっっ、遅かったかぁ!!

「なななななにしに来たアルか?」
「な、多すぎ。つーか分かってんだろ?なんで来たか」
「いいいや!知らん知らん!分からんアル!!」

また顔が熱くなるが、そんなの気にせずぶんぶん首を振る。

「またまた〜話の続きだったろィ。ほら行くぞ。旦那ァ、コイツ借りまさァ」

がしっと体を掴まれて、肩に担いだ

「ぎゃあああああああ!何するアルかぁ!!降ろせぇ!」
「いいですよねィ?」
「事情は知らねェけど、どーぞどーぞご自由にー」
「銀ちゃあああああん」

お構いなしにサドは万屋を出て、戸を閉めた。

「なんだったんでしょうね」
「さぁなー」





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