「ねぇ神楽ちゃん!先輩とのデートはどうだったんですか?」


昼休みの昼食中。

興味津々とばかりに声を潜めつつも興奮が漏れ出していた。

「で、デート…?どうって…楽しかったアルヨ」

そよちゃんの剣幕に押され、小さくぼそぼそと答える。


先週の日曜日、私は沖田先輩と遊園地に行った。


今までが本当に嘘のように優しく大人だった。リードするのはもちろんあっち。

未経験の私には全てが新鮮でくすぐったくて仕方なかった。

「へー?じゃあその後はどうだったのよ?」

「さっちゃん!わざわざここにまで来たアルか?」

「お妙にアンタがあの沖田とデートしたって聞いたからね」

「ごめん、言っちゃった」

姐御も来て、二人とも何食わぬ顔で弁当を広げだす。

まぁいいけど。

「で?どうなのよ」

その後?

どういうことアルか?


そよちゃんが赤くなって俯いてる。

「?普通に帰ったけど」

「えっ!」

さっちゃんでなく姐御が驚いている。
なんで?

「まぁあなたのその様子を見る限りそうでしょうね。じゃあ今どこまでしたのよ?」

「猿飛さん…」

「まぁまぁ。あなたたちも興味あるでしょ?神楽ちゃんどうなのよ」

「…『した』?」

ハァーとさっちゃんが呆れたため息を吐き出し、渋々説明しだす。

「だーかーらぁ。チョメチョメ的な」

「!!!」

やっと意味が分かった。

さっちゃんずっとそれのこと聞いてたんだ

「手、繋ぐとか……」

「「「えっ!!」」」

みんな一斉にハモってさっきよりもかなり驚いている。

そよちゃんも真っ赤な顔で俯いてたくせに、しっかり聞いていたようで一緒になって目を点にしていた。


それからサッ、と三人は私に背を向けて顔を寄せてひそひそと話をしだす。

(どういうことよ。C、BどころかAすらいってないなんて)

(さっちゃんさん、さっきからいちいち古いし親父くさいです…。意外に紳士ってことですかね?)

(でもあの噂の絶えない沖田総悟よ?火のないところに煙は立たないって言うし、これだけ言われてたら本当のことだと思うのよね)

(じゃあ…)

(えぇ。心配してたけどけっこう本気で愛されてるってことじゃないかしら?)

「ねぇ、みんなどうしたアルか…?」

「いえ、何も!!」

「そうよ、神楽ちゃん」

「よかったわね」

「へ…?」




私ってやっぱりまだおこちゃまアルな…。

「チャイナ、なにぼーっとしてんでィ?」

「はわっ!いえいえ!」

「そう?」

先輩付きあいだしてからありえないくらいすっごく優しくなった。

私が経験ないことを知ってかすごくしっかりして気を遣ってくれるし!

「そういやァ、昨日のあの番組見たかィ?」

「あっ、見たアル!昨日のはけっこう面白かったネ!」

こうやって話題もリードしてくれるところとか些細なことにも気付いてくれる。
こっちが何もできないから悪い気さえしてくる。


「じゃあまた明日」

「はい。さようならアル」

何気にいっつも家まで送ってくれるし…

こういうの、女の子にはたまらないんだろうな。そりゃモテる筈アル。

どれだけの人と付き合ってきたんだろう。


先輩の背中を見送りながら、蓋をしていた不安がまた溢れ出して止まらない。


"どこまでしたの?"


キスすらまだ…

それって結構、遅いってことだよナ…


そよちゃんたちの反応からして。私ってまだまだおこちゃまだし別にしたくはないのかもしれないアル。


いろんな人と付き合える先輩の理想はもっと高いはず。

やっぱり私じゃあ先輩には釣り合わないヨ…




********




あんまり先輩とは会いたくないときにナイスタイミングに先輩が用事で私が先に帰れることになった。


運がいいアル。

靴箱から靴を取り出そうとしたときにすごい速さでこちらに誰かが走ってくる。

「ちょっとそこのあなた!」

「…私?」

「そうよ!!」

見覚えがない女の人。
なんとなく先輩…?

「私、3年生のうららっていうの。そんなことどうでもいいわ。あなたが神楽よね?単刀直入に言うわ、総悟と別れてよ」







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