行く先々に慎重に向かい、サド先輩がいれば遠回りをするか、そこには行かないようにした。


避けること1週間。

我ながらよくやったと思う。


でもあれだけ偶然が続いていたんだ。
ずっと逃げ続けられるなんて意識してもできなかった。


「やーっと捕まえた…」

「先輩…!おはよーございますアル…」

「またアンタどっか行っちまうし。タイミング悪すぎ」


ギクッ!
でもまだバレてないようで、ひとまず安心。


「しかもあれから全然会わねェから焦ったぜィ」

「ごめんなさいヨ」


ここは当たり障りなく謝っておくことが無難だろう。


「おう。…よし、うん。今だよな…」


先輩がなにやらボソボソ独り言を言い出した。

それから大きく深呼吸をしだすものだから、黙って観察してみる。


「えー…あーチャイナ」

「何ネ?」

「あのさー前々から言い損ねてるけど、今回は聞けよ」

「う、うん」


いっつも悪い予感しかしてなかった。

でもまぁ大した話じゃない、でしょ。多分。


「ほ、本気で好きでさァ」


ーっ!

「っえ?」

「付き合えよコノヤロー」

「え、いや、その…」

「なんでィ」

真っ赤なのに、凄んでくる先輩からは真剣そのものであるように思えた。

「え…でも、」

「だからなんでィ…」

「本当に「本気だっつってんだろィ!ここで走りだすなよ」

流石に3回目は通用しないだろうナ。

この様子だと先輩は信じていいのかもしれない…

「私は‥…」

嬉しい筈なのになぜだか泣きたくなった。

もう私は断ることなんてできないことを悟る。


先輩は何も言わず、ただじっと私を見つめて返事を待ってくれている。

「私も…先輩のことが、すき、アル…」

そう言ったと同時に先輩は私を引き寄せた。

吃驚した体はされるがまま。

「やっと、手に入った…」

ちゅっと頬にキスをされ、体がビクリと強張る。

心臓がさらに高鳴る。

「絶対に大切にしまさァ」

私、きっとこの人を信じていいんだ…

そう言い聞かせて安心させる。

でもやはり不安を拭い去ることができなかった。



いずれ壊すなら、今壊して。



「じゃあ明日さっそくどっか行こうぜィ!」

「う、はい‥…」

「なにその微妙な反応」

「は、初めてだから緊張するアル…」

先輩は嬉しそうにガッツポーズをした。

よく分からない。


先輩は慣れてるだろうから遊ばれてるのかが私には判断がつかない…

いやいや!私は先輩を信じるんだ!





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