あ、神楽。
ふわふわと揺れて歩く人影を発見。

お気に入り、というか初めて惚れた女。一生絶対に俺のモノ。

遊びまくってた俺も最近は全く他の女になんぞ興味ない。

一気に回数は0になった。

「おーいチャイナ!」

神楽って呼びたいけど、まぁそういう仲じゃないんだよな…。
気付いたチャイナはびくりと肩を震わせた。

「な…何ですか?」

なんか挙動不審。俺に怯えた感じ?

「何してんの?」

「屋上でパン食べようかなって…」

「ふーん。じゃあ俺も行きまさァ。」

「え゛っ」

ものすごい嫌そうな顔をされた。
すげェショック。

いつも女の方から寄って来たのに、惚れた奴に限ってそうじゃない。世の中不毛だ。
こっちは打たれ弱いんだ。

「嫌?」

「いえっ…別に」

心の底から嫌がってるわけじゃなさそうなんだけど、引っかかる。

「じゃあ行くぞ」

やけになって強引に連れて行った。



********



しーん。
なぜか無言。

黙々と食べるチャイナ。
早く昼を終わらそうとしているらしい。

そうはいくかっ

「なァチャイナ「沖田くぅ〜ん!」

いきなりケバ女が俺たちの時間を邪魔しやがった。誰だコイツ?気色悪ィ。
沖田君とかてめェに呼ばれる筋合いはねェ。

「先輩、行ってくるヨロシ」

追い返そうとしたらチャイナが追い出そうとしてきた
苛立って罵倒を浴びせるために女と屋上を出る。

「ねぇねぇ沖田君!次はいつ遊んでくれるの?最近ずっとあんな地味な子に構ってどうしたの「黙れ。誰だか知らねェけど遊ばねェから。俺の前に二度と現れんな。失せろ。」

まァもっと言ってやってもいいけどチャイナとの時間が惜しいし。

女は泣きながら走り去った。あぁスッキリした。


屋上に戻るとまた俺を見て少し眉を顰める。

「早かったですね」

「まァな。あんな奴になんざ興味はねェ。」

「…そう」

全く信じてない。

「なんかあった?」

「何もないヨ!」

手をブンブン振って必死で否定するところが怪しい。

「チャイナとの時間が失くなっちまうからねィ」

すごく素直に言ったのに、チャイナの顔が引きつっている。

「そうですか…」

「チャイナ…」

これはなんかやばい。

何か弁解しようとすると先に遮られた。

「じゃあこれにて失礼しますアル!私は気にしないでいいからさっきの人とあの、ドウゾッ!!」

すごい勢いで出て行くチャイナ。
なんてことだ。
厄介な誤解をされてしまった。

「ハァ…」



********



昼はなんか嫌な時間だったなぁ。そんな風に思っていた。
授業を終えて、さて帰ろうと階段を下りていると、誰かの手が肩に置かれた。

「チャイナ」

振り返るのを躊躇われた。よく聞く声だし、私をこう呼ぶのは一人しかいない。
該当する人物だとしたらあんまり話したくないなー…

「おい無視か?」

恐る恐る首だけ動かすと、案の定というかなんというか…

端正な顔はにこりと笑っていて余計に恐怖が増す。

「先輩…ど、どーも…」

「ほらほら早く帰ろうぜィ」

にこにこ笑っている先輩に引き攣っている私はスルー。しかもまたもや一緒に帰るのは決定。

「はい…」

渋々な気分で靴箱まで歩きだす。

「なァチャイナ」

「はい?」

「チャイナのこと好きなんだけど」

「…」

声が出なくなった。

「誰が何を?」

「いや俺が、チャイナを、好き、だっつってんだよ」

「え?」

「だからチャイナ俺と…」

これ以上聞いたら危ない。
これ以上聞いたらきっと私は……

頭真っ白で。そしたら先輩を振り切って何も考えずにただ走っていた。

どうしてあんなこと言うんだろうか。

あんなことを冗談でも言われたら多分断れないのにさ。本気にしてしまう。
私みたいな子よりも…もっと…





(あぁ、なぜか涙が出そうアル…)






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