「あの、何か落としましたヨ?」

「え?あ、ごめん。それ僕の…って君は……!」

「え?……………あー!もしかして沖田先輩と仲のいい…ジミー先輩!」

「じ、ジミー…」


自分のハンカチを拾ってくれたのはあの沖田さんの彼女、チャイナさん。


けっこう沖田さんから話を聞くものの、実際に本人と話したのは初めてだ

ていうか沖田さんが頑として会わせないし…。


「君もこれから学食?」

「そうネ!ジミー先輩もアルか?」

「うん、そうだよ」

「じゃあ一緒に行くヨロシ!」


ぅえぇっ!?

いや、えと、嫌ではないんだけどなあ…
沖田さんに見られたらと思うとゾッとする。

けれどもチャイナさんのにこにこと可愛らしい笑顔に何も言えない。


「う、うん。行こっか」


やばいやばいやばい…
思わず頷いちゃったけどこれ見られたらホントに死ぬ…!


「ジミー先輩は沖田先輩と仲いいアルか?」

「え、うーん。いいか悪いかはなんか微妙な気が……」

「先輩はそんなもんだからネ。きっと仲いいアルな」

「はは、まーね。そういうチャイナさんは最近沖田さんとはどう?」


俺が聞くと、チャイナさんは少し黙り込んだ。


「…悪くはない、かナ?仲直りしたし……」


おぉ、反応がイマイチ。
やっぱり沖田さんが上手く相手できない子だもんなぁ


「喧嘩でもしてたの?そういえば沖田さん先週まではなんか凹んでたなぁ」

「あの先輩でも凹むアルか!?」

「珍しいんだから」

「でもそれ私と関係あることネ?」


え、マジですか!

首を捻って唸る姿は本当に分かってないことを物語っていた。


あぁー、なるほど鈍感…


「関係大アリ、っていうか原因だよ?」

「え?」

「感じないかな。なにか、冷たいものを」

「?何も感じないヨ」

「そうか。君に送られてるものじゃないしね」


そう、さっきからひしひしと伝わるんだ。

殺気が。


「沖田さんこっちに気付いてるんだ…」


一体何処から…!?


「え?」

「いや、何でも。チャイナさん大変でしょ。沖田さん嫉妬深いし」


言わずもがなチャイナさん限定で、だけど。


「え?うーん、嫉妬深いなんて初耳アル。そんなことないネ」


えぇ〜!それも知らないの!?

周囲にはバレバレなのになぁ……


「むしろ私の方が嫉妬深いアル…先輩が綺麗な女の人と話してると心がもやもやするネ……」


…うん、多分それわざとだ。
沖田さんチャイナさんのこと溺愛だからね。

って言ったら睨まれそうだから言わないけどさ…


「…誰ともね、話して欲しくないって思っちゃうもん……」


あー。

これは可愛いね。沖田さんが首ったけなのも頷ける。

そういうことも言ったら殺されそうだから言わないけど。


「言っちゃえばいいのに」

「えっ!それは無理アル!!だって最近あんなことあったばっかヨ?次こそ呆れられちゃうネ!」


いや、沖田さんなら狂喜すると思う。


「そりゃ、分かってるアル。沖田先輩が、わ、私を好きでいてくれてるってことは…でもそんな我が儘言ったら引かれちゃうネ」


…あれ。もしかして沖田さんの接し方がクールなのかな。

以前ではありえないほどチャイナさんのことを惚気られる俺から見たら何の心配もないんだけどなぁ。


「うーんと…なんて言ったらいいかな……俺、今の沖田さんすっごく変わったと思うよ?それもチャイナさんのお陰だ。沖田さん、甘えちゃってもいいと思うけどな」

「へ…!?」


チャイナさん真っ赤になっちゃった。
やっぱり可愛いなぁ。


「なんか最近揉めた?」

「えっ!?先輩何か言ってましたか!?」

「ううん、ただすんごく機嫌悪かったから…」


するとチャイナさんは先程とは全く変わり、決まり悪そうな顔をした。


「私が悪いアル……私、先輩に好かれてる自信なかったから、いろいろあって…」

「あ、ありゃりゃ…」


沖田さんの死活問題だもの…そりゃ荒れるよな。


「説教されちゃったネ…」

「あ、はははは…まぁ、そんなに怒ってないだろうから、大丈夫だよ」

「…そうアルか?」

「うん、沖田さんチャイナさんにだけは甘いじゃん」

「えっ…!それはどうかナ…」


でもチャイナさんは俺にそう言われたのが嬉しかったらしく、目を輝かせていた。


「チャイナさん沖田さんのこと大好きなんだねぇ」

「…!そりゃあ、まぁ……付き合ってるし…」


俯きながら手をもじもじとさせて、そのうち黙り込んでしまった。

…こんなに愛されてるのに、沖田さんも少しは信用したらいいのにな。


微笑ましい…
リア充爆発しろ。


「おいザキー、テメーなんで神楽といんでィ」


っぎゃひいいいいっ!!?
すいません、嘘です!


「先輩!」

「…神楽」


ぱぁっと顔を嬉しそうに沖田さんを呼ぶチャイナさんとは対照的にむすりとした沖田さん。


精一杯黒い影を出さないようにしてるがどうにも複雑な表情……って冷静観察してたけど明らかに俺のこと睨んでるよね?

え、まさかのとばっちり!!?


「ちちち、違いますよ!そんな、世間話してただけですから!」

「んなもん当たり前でィ。なんかあったらぶっ殺してやらァ」


チャイナさんは俺と沖田さんとの会話をあまり分かっていないらしく、首を傾げているけど、これチャイナさん関係あるから…っていうか渦中の人物だからね!?


「さっきから神楽がちょいちょい赤面してたの、アレなんだ。一丁前に口説いてた、とかじゃあ…」

「違いますって!!」


改めて思うけど、心狭ぇえええ!!

わざわざ沖田さんのガチ好きな人狙って自分の命を危機に晒したくないし!


「?何の話してるアル?」

「何でもないっ!なんでもないよ!!じゃ、俺さき行くから!」


そそくさとその場をさった。


ごめんチャイナさん、沖田さんの目がどっか行けって言ってるんだものおおおおおお!!



「…?ジミー先輩顔青かったような…」

「気のせいでィ。俺らも食堂に向かいやしょう」


大丈夫かナ。調子悪かったのかも。後で薬とか…

あ。
今気づいたけど、私先輩とふたりきりアル!


「で?ザキと何の話してたの?」


へ?ジミー先輩と?

、あ…………よく考えたらほとんど先輩のことアル!!


「っそ、そんな大した話じゃないネ!ホントに世間話くらいアル!」


そしたら先輩、なんでかムッとしちゃった。


「俺に言えねェ話?」

「え、えーと…ホントに大した話じゃあ……」


本人に話してましたー、なんて…


「あ、そ」


黙っていると、早足で歩き出した。
足の長さが違うから、私は自然と小走りになる。


「どーしたアルか?」

「別に」

「せーんーぱーいー」

「……」


私が歩くスピードを落としても先輩はそのまま行ってしまった。

もしかして、怒って、た?
また怒らしちゃったアル……





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