昼前に神楽にメールをしたが、返事がなかった。 帰りの誘いを入れたのに校門にもいなかったところを見るとメールを確認していないのだろうか。 急いで帰路に着いた。 といってもアイツの家を知らないから追いかけようもないんだが。 俺の帰る方面に神楽がいるか、運に任せてみるということだ。 ……いた! 流石俺、こういう時には運がいい! 「チャイナ!」 名前で呼ぶの恥ずかしくて思わず瞬時に思い付いたあだ名を口走っていた。 キョロキョロと辺りを見回す神楽。 「お前だよ!」 「私アルか!?なんだヨチャイナって!」 俺を見つけるとぎゃあぎゃあと噛み付いてくるところが、女としては新鮮だ。それも嫌じゃない。 「それより先帰るなよ」 「なんでネ?」 「メール入れておいたんですがねィ」 「そんないつもいつも確認してないですヨ」 「…ふーん」 俺はお前からのメールとか来てないか結構マメに確認してんだけど。 やっぱあんま意識してないってかィ。 そこは掘り下げるとへこみそうだから置いといて、今日の授業中のことを思い出した。 「リレー見てたぜィ。足速ェんだな」 あ、なんかストーカーみたいな発言かもしれない。 実際探しまくってはいるけど近藤さんみたいなんじゃないから。 「そうダロ〜?ふふん」 「バトンミスが痛かったなァ」 「!よく知ってるアルな…」 「まァまァ落ち込むなって」 からかうような口調でわざと神楽の気を逆撫でるように言った。 絶対神楽は乗ってくる。 「う、うるさぁああぁあああい!!」 殴りかかってくるのを慌てて避ける。 こんな女、本当に初めてだ。 それで物凄く居心地が良くて、可愛くて、全部が欲しい。 会う度会う度にどんどん好きになるって、コイツだけだ。 きっとこの先他にいるわけない。 ******** パンを両手に屋上に向かう。 お昼の時間、今日はなんだか一人で食べたかった。 早弁してしまい昼は我慢かと思われたがそよちゃん…いえ、そよ様に賞味期限が切れそうなのだと、沢山頂いた。 嬉しくて自然と階段へ向かう足取りが軽く、軽くスキップしてしまう。 屋上に先輩いるかも。なーんてね。 沖田先輩って軽いので有名だからナ。 正直それを知った今では面倒なことには関わりたくないというのが本音。 ううん、違くて… 好きになってしまいそうなのかも、あのタラシを。 それだけは駄目だ!私は多分関わらない限り大丈夫だろうからもう会うのは避けたい。 ………あれ。嫌な予感。 「チャイナー」 この声は……ハァ。 「な、何ですか沖田先輩…?」 先輩…。 なぜここにとか聞いてしまうのは厄介なので口を固く閉じてさっさとこの会話を切り上げるようにしよう。 「今からどこ行くんで?」 「お昼を食べに屋上に…」 「俺も行く」 「え゛っ」 まじでか。そりゃあちょっと… 「嫌?」 「いえ、嫌じゃないですヨ…」 でもあんまり沖田先輩といると周りからの目とか気になるし、なにより自分の気持ちがいらぬ方に傾きそうで。 先輩は私の手を取って、引っ張った。 「わっ!」 「じゃあ早く行こうぜィ」 屋上に来て、こういうときは世間話でもするんだろうけど私は黙々とパンを口に運ぶ。 何故か食べる前にもうお腹が空いてなくてあんまり食べたくない。 でもあまり食べてないのに立ち去ると明らかに避けてるように思われるかもしれない。 それは誰だっていい気はしないだろう。 食べ終わったって理由があれば… 先輩の視線も感じる中気付かないふりをしてパンの数を減らそうとした。 う…。やっぱパンこんなにいらなかったヨ…… 「なァチャイナ「沖田くぅ〜ん!」 扉からいきなり化け物みたいな顔の女の人が先輩に駆け寄ってきた。 この人多分化粧下手アル… できない私が言えることじゃないけど 私を挑発するような目で睨んでくるところを見ると何か勘違いをなさっているよう。 ちらちらと私を気にする先輩。そんなに気遣わなくていいのに。 渋る先輩に勧めてついて行かせた。 「は…やっと緊張から解放されたネ」 今のうちにパンの数減らしとこ!! まぁ戻ってこないかもしれない… と思ってたら2分もしないうちに戻ってきてしまった。 もうちょっとでパン食べ切れたのに…! 「は、早かったですネ」 「チャイナとの時間削りたくないんで」 …またまた。 だからそんなに気を遣うことなんてないのにね。 「…そうですか」 「おい、チャイナ「じゃあ私食べ終わったんで帰りますアル!私のことはもう気にしなくていいのでさっきのあの人と、その…どうぞごゆっくり!」 わざと遮った。 なんか怖くて先輩の顔から目を伏せて足早に屋上を去る。 先輩は一体、何が目的なんだろ… back |