つまらない高校生活。

少なからず期待を寄せていた中学の頃が懐かしい。


主に性欲の処理だけに適当な女と適当に付き合う、怠惰が続く日々。

正直いなくても構わないのだが何となくだ。



そんなある日。

ある女好きの奴が俺を合コンに誘った。
コイツがこういうときは大抵俺は餌に使われている。


今は浮気がバレて別れたばかりでフリー。

使われることは気に食わないが、いいだろう。暇だし誘いに乗ってみようか。





********




今日はどんな女が集まってんだ?

ま、期待はしてねェ。というか女なんてどれも一緒か。


何も変わらないつもりだった。
なのに、驚いた。


奥の端に座り、合コンに来たというのに男に目もくれず、ひたすら運ばれてくる料理にがっつく奇抜な髪の色の小さい女。


なぜかものすごく惹かれた。


よく見ると目も大きく可愛い感じの顔立ちが、俺の好み過ぎる。


今度はアイツにしよう、と思ったがなぜだか近付くことができない。


結局その日は全く話しかける事ができなかった。




********




あれから数日。

ちょっとした興味だけだった筈だ。

だが無意識にあの女を探していた。同じ学校と聞いたがいくら探せど彼女を見つけることができないでいる。


「なぁー。あの神楽って子分かる?ほら、オレンジ頭の」


俺を誘ったアイツは上手くいかなかったようでまた合コンの話でもするのかと聞き流そうとしたが。


「男そっちのけで食ってた奴?」

「そうそう!可愛いよなぁ」


つーか神楽っていうのか。ピッタリじゃねェか。
にしてもなんで知ってるんだ。


「1年生なんだけどさ、色白で目もパッチリしてて可愛いからアド聞いたんだけどよー。あ、お前はキレイな感じの方が好みか?」


勝手に決めんじゃねェ。俺もあーいうのが好みだっつの。

というのは口には出さなくてもいい。


「そいつ何組?」

「え?あぁ、確かB組だったと思うぞ?」


1年か…
まぁ確かに1年っぽいか。

とにかくクラスまで分かりゃこっちのもんだ。


「でも結構性格キッツイんだよなぁ。完全にフられたし」


コイツはどうにかしなくてもいいようだ。

神楽、ねィ…
萎えるどころか日に日に楽しみにならァ。




********




しかしどうやって話しかけよう?

…いや、そもそもなんで俺はこんなにも神楽を気にしているんだ。


そうやって自問自答している間にもまだ何もできていない。



そんなこんなで、神楽の所へ行けないでいると最悪なことに今土方と二人きりで近藤さんを待たないといけなくなってしまった。

吐き気がしてきたじゃねェかィ。


するとこっちに、というか土方の方に視線を向けて走ってくる人。


「土方さん!」


あァ、確か徳川のお嬢様。
ときどき土方の所に来てるのを見る。

俺には関係ないので待つ義理もないし近藤さんももういっか、と思って先に帰ろうと前方に視線を向けた時。


「そよちゃん速いアル…あ。」


神楽…!

初めてちゃんと真っ直ぐ見るとさらに可愛い。


たまたま付き添いで来たのだろう。
俺をあの合コンの参加者と知って、アイツの振り方に負い目を感じているのか目を逸らされた。


ともあれ俺の存在を彼女が知っているのが無性に嬉しくて。


思わず手首を引っ掴んで連れさってしまっていた。




********




アイツの話から繋げてアドを聞き出す。ついでに名前も教えてある。


それにしても俺はどうしてこんなに必死なのか、女に対して初めてだ。


気になってんのか?
いや、これは。

好き、なんだろう。

なにしろ初めてなものだから曖昧だが、あっさりと受け入れることができた。


要するに一目惚れから始まって、会ったことで幻滅どころかさらに好きになってしまったわけだ。


こうなったら手に入れるしかない。
だが、一つ問題がある。

彼女は俺にあまり興味を示さない。


大抵の女ならたまたま寄っただけで期待されて何時のまにか付き合ってるというパターンも少なくないし、自分から仕掛けたことなんてほぼ皆無。


彼女を好きになって初めて気付いたのだがどうやら俺は恋愛初心者らしい。

挙げ句に取った行動がメールでも直接でも悪態って…。

こちとら繋ぎ止めようと必死なんだよ。




昨日もメール遅くまでしちまって。

今担任が何か話してんのも聞かないで外を眺めていると、校舎の中に急いで入って行く奴が。


神楽だ。
寝坊したのか…。あーあ、もう間に合ってねェよ。

神楽もそれを分かってか普通に歩いてる。

俺とのやりとりのせいで寝坊したのかと考えるとなんか嬉しくなるって。


そうとう末期だ。








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