高校に上がり、間もなくのことだった。
中学のときから同じクラスで顔見知りだった遊佐に告白をされた。彼女は溌剌としていて、裏表なく人と接することのできる女子だ。若干スカート丈が短かったり、カーディガンを袖や裾から見せたりと、校則を軽く破ることはあったが、しっかりと学業にも励み、順位も悪くない。委員会にも積極的に参加し、部活動でも良い結果を残してきた。好感が持てる。実際、告白を受けたときは、恥ずかしく、驚きもあったが、正直内心とても喜びを感じていた。こうしてみると、俺も彼女をそういう風に少なからず見ていたのだろう、と思い、真剣に告白をしてくれた遊佐の気持ちを汲み取った。

彼女の気の抜けた、あの笑顔を俺は忘れないだろう。

そしてそういった付き合いをする以上は、気の置ける仲間には報告をせねば、と、今に至るわけだが。

馴染みのある顔ぶれ(幸村、蓮二、仁王、丸井、桑原を指す。柳生は委員会で遅れている。無論全員がテニス部に入部した)が部室に揃ったのを見計らい、報告をせねばならんことがある、と切り出した。皆神妙な顔つきで集まってくる。

「どうしたんだい、急に」

「何かあったのか、弦一郎」

「なんじゃ、お前さんも知らんのか、参謀」

俺も蓮二あたりには知られている気がしていた為に少し意外だった。それだけ遊佐が分け隔てなく人と接しているからかもしれん。良く考えすぎかもしれないが、そう思うとますます好感が持てた。

「いや、俺自身のことなんだがな。先日、とある女子からの告白を受けた」

正直少し照れくさかったが、俺は何とか堂々と振舞って見せた。数人の顔が張り詰め、数人はきょとんとしている。

「なあんだ、告白されただけ…ん?今なんて言った?」

「とある女子に告白された、じゃないで、とある女子からの告白を受けた、かのぅ」

「つまり、簡潔に言えば、――彼女が出来たということか?」

「そういうことだ、な」

沈黙が降りる。見渡せば各々様々な反応を見せていた。蓮二が大きく開眼している。丸井の口から棒の付いたキャンディが、滑るようにして落ち、床で砕けた。と、同時に幸村が叫んだ。

「ささささささささ真田に彼女が出来たああああああああ!!!?」

それを皮切りに全員が詰め寄ってくる。全員が違うことを好き勝手に喋っている。俺は聖徳太子では無い為全てを聞き分けることは出来ないが、しかし共通して言えることは、全員目が血走っていた。俺でも流石に怖かった。