私服の真田君はいつもの10倍、いや、それ以上にかっこよくって、私は隣にいていいものかと本気で悩んだ。でも真田君も私を見て顔をほんのり赤くして褒めてくれて、それがわかったから私は安心して真田君の隣に立った。


「これからどうするんだ?」

「んー、初めてのデートだし、ベタかもしれないけど映画でも見ない?」

「ああ、そうしよう」


あ、今、初めてのデート、って言葉に照れた。かわいい真田君の反応に、ついクスリと笑いが漏れる。いつも姿勢よくすたすたと歩く真田君だけど、私といるときはいつもゆっくり歩いてくれる。少しだけ背伸びして高めのヒールを履いてきたから、今日はいつもよりも遅いのに、それでも彼は何も言わずにゆっくり私に合わせてくれている。


(そういうところが本当に好き)


キュンと鳴る心臓を押さえつつ、真田君と他愛のない話をして、ショッピングモールへ向かった。休日のショッピングモールはやはり人が多い。たくさんの人とすれ違う。少しだけいやな予感がした。


「あっ!」


ほらやっぱり!すれ違いざまに人とぶつかって、普段あまり履かないヒールで足元がぐらつき、後ろに倒れる。そのまま体制を立て直せず、思わず目を閉じた。…と、どんなに待っても衝撃がこない。代わりに感じたのは背中に何かが当たる感触。恐る恐る目を開ければ、真田君のどアップが私を待っていた。


「あ、あ、ありがとう」

「う、うむ」


どきどきとわざとらしいくらいに鳴る心臓に、熱すぎる顔。真田君も顔真っ赤だし、もう、ヒールなんか履いてくるんじゃなかった。


「遊佐」

「あ、う、うん?なに?」

「手を、繋がないか」


うへ?びっくりしすぎて変な声が出た。まっ、え、おあえ!?いや私も繋ぎたいなとは思ってたよ!?でも真田君そういうの苦手かなって思ってうわあああああ駄目だコレたぶん夢なんだと思う!たぶんまだ夜明けてないんだと思う!


「もももももももももも勿論ですよろしくお願いします!」

「ひ、人も多いしさっきのようなことになっては大変だからだな…!」

「う、うん!わかってる、分かってるよ!」


手汗やばいかも恥ずかしい!あ、でも真田君も凄い緊張してるっぽい…。そうだよね、だっていつも真面目で純粋だもん。きっと言い出すのは恥ずかしかっただろうな。


「真田君、ありがとうね」


お互いに真っ赤な顔を合わせて笑い合えば、ああ、なんだかどんどん真田君と距離が近付いてくのがわかる。どうしよう。幸せ。