「幸村くん!」


とあるなんでもない日の放課後。部活前。ブン太が俺の名を叫びながら部室に入ってきた。


「なんだい、そんな大きな声を出して」

「何か変な奴いた!」

「何!?不審者か!?」


ブン太の返事に真田が立ち上がる。それは俺じゃなくて先生か警察に言え。


「違うっつの!話ややこしくなるから黙ってろよぃ!」

「むぅ…」


おとなしく席に着いた真田を無視しつつ、ブン太は俺の隣の席に着いた。仕方なく頬杖を付いたままブン太のほうを見る。


「んで、何?」

「いやあさぁ、さっきな、近道しようと思って旧校舎の方通ってきたんだよ。んで、特に理由はないんだけど、あーいうなんかでそうなとこって見ちゃうじゃん?てか俺は見ちゃう方なのね?んで、チラッと旧校舎見上げちゃったわけよ」


ブン太の身振り手振り話す様子に、いつの間にかレギュラー全員が集まっていた。お前ら暇だな。あ、そりゃ暇か。まだ部活始まってないしね。


「そしたらさ、うちの制服着た女子がさ、旧校舎の二階を





めっちゃいいフォームで走り回ってたんだ」

「何っだそれ」

「おー待て待て、ジャッカル、人の話は最後まで聞くもんだぜ。そいつの後ろには、何もなかったんだ。でも、そいつはまるで何かに追いかけられるかのように泣きながら必死に逃げていた」

「…実際追われてたんじゃない?」


鬼ごっこしてたとか。そんな中、がたんと立ち上がった馬鹿が一人。


「丸井先輩それやばいっすね!絶対幽霊っすよ!」

「ああああ赤也!お前ならそう言ってくれるって信じてたぜ!!」

「はーいはい、くだらないこと言ってないでさっさと練習行くよー」


コートに向かいながら盛り上がっている二人にため息をついた。