二人分のお弁当箱を手に持ったまま固まる高尾君に、落ちたペンギンの置物を拾おうともせず止まっている緑間君。

あらやだ二人で屋上ランチですか?そしてそのまま給湯タンクの裏でにゃんにゃんですねわかりますごちそうさまでーす!


「愛子、よだれたれてる」

「そういうユリコこそ顔にやけてるよ」


二人で小声で話していると、高尾君が顔を引きつらせてこちらを指差した。


「今、なん、て?大坪先輩が…え?」

「…何か変なこと言ったっけ私」

「…さあ?」


二人で首を捻っていれば、高尾君が緑間君を引っ張って、私たちの隣にどっかりと腰を下ろした。えええええええええええ

なんだかコレはアレだね。いつもテレビで見ている人が、隣に座って親しげに話しかけてきたようなそんな感じ。そして話しているうちに、彼等が誤解をしていることが分かった。


「なあああんだよそういう話!?」

「ナニ想像してたんだかぁー」

「元はといえばアンタが悪いだろ!」

「大坪先輩がそんなことをするようには思えないのだよ」

「やだー真ちゃん、そんなことってどんなことー?」

「いやーんむっつりー」

「黙れ!」


高尾君と二人で緑間君をからかう。てか高尾君と緑間君仲良しかよ可愛すぎかよ付き合っちまえよ。二人は持ってきたお弁当の包みを開き始めた。中身が一緒だったらおいしいよね。一緒に住んでたらいいよね。ああ、あああ。それほんといい。


「ノリいいし面白いね!名前きいてもいい?」

「夢野愛子。こっちが天野ユリコ」

「はじめましてー」

「こちらこそっ!はじめましてっす!」


おい、高尾君や。君態度変わりすぎじゃないかな。美人に弱いのかそうなのか。


「今高尾君の低俗なところを見たよ。ね、真ちゃん」

「その呼び方はやめろ。だが同感なのだよ」

「え!何々?俺何かした!?」

「無自覚か。ますますタチが悪いのだよ」

「俺の口調を真似するのはやめろ」


まあでもユリコにならしょうがないよね。なんてったって美人だもの。たぶん緑間君もその内ユリコにキュンッとなっちゃう気がする。てか男子なら、ユリコの本性を知らない内は皆そうだと思うの。


「世の中不平等不公平だ」

「はい愛子、チョコよ」

「あー、ん」

「んんんんんんんん可愛いいいいいいいい」

「苦しいいいいギブギブギブ」

「天野、夢野が死に掛けているのだよ」

「げほっ、ありが、とう、真ちゃん」


思いっきりのど絞められて涙目になっちゃったよ。あー、苦しかった。


「あれ?真ちゃん顔赤くない?」

「馬鹿高尾!そんなわけないのだよ!」

「馬鹿って…」


その後緑間君はもそもそとご飯を食べていってしまった。それに慌てて付いていく高尾君を見ながら思った。


「ご馳走様です…」







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