私は究極の雨女だ。私の鞄の中にはいつも折り畳み式の傘が入っている。必需品。楽しみにしていた行事や旅行や友達との約束なんかはいつも雨。雨が降らなかった例がない。だから、仲の良い友達はいるんだけど、遊びに出かけるとなると、皆滅多に私の事を誘ってくれなくなってしまった。超寂しい。ちょっとしたショッピングとかなら行くんだけどね。


「あー、誰かこの作品知ってる奴いねぇかなー」


とある日、同じクラスの宮地が何かチケットみたいなものを持ってそう嘆いていた。宮地はクラスの中ではおそらく1番仲の良い男子だと思う。宮地はこんな髪色をしてるくせに頭がいい。顔もいいもんだから余計に腹が立つ。


「いやいや、そんな古い映画見る奴いねぇって」

「ばっかお前なめんなよ。今の薄っぺらい恋愛映画なんかよりよっぽど奥深くて面白ぇんだかんな」


それは確かに言えてる。私もレトロな映画は好き。皆最新の恋愛映画とかで騒いでるけど、ああいうの、個人的には面白いと思えない。宮地が言うとおり、薄っぺらい、と思う。……好きな人には失礼だけど。


「期間限定で上映してくれんだよなーこの映画ー…」


なんか…何見たがってるのか気になってきた。誘惑に負けて、宮地に近付き声をかける。


「ねえ、それ、何のチケット?」

「お、名字いいとこに。コレ」

「!」


それは昔ヒットした白黒時代の古いロマンス映画。何度もレンタルして観るくらい私も好きな映画だった。


「待って、この映画が上映されるの?映画のスクリーンで?」

「この映画知ってんのか?」

「知ってるも何も大好きだわコレ。ねえこれリメイクとかじゃなくてほんとにあの映画まんまなんだよね」

「そう」

「観たい!余ってるなら一枚頂戴!」


ぱん!と手を合わせると、宮地はにやりと笑った。


「んじゃ、土曜日。俺の家の近くの駅集合で」


そう言うと、ノートの切れ端にささっと駅名とアドレスを書き込んで私に手渡してきた。宮地はそのまま席を立って何処かへ。私は暫しぽかんと突っ立ってしまって、頭の中を整理できずにいた。そして自分の席に座って手の中の切れ端を見て漸く気付く。これデートじゃん!?

それから時間決めるのにメールを送ったり、洋服を決めてみたり随分乙女風な時間をすごしていたんじゃないかと思う。うう、悔しいが否めない。私ってやっぱり宮地のこと







「よ。ずぶぬれだな」

「ははは…」


案の定、当日は大雨で。昨日までくもりの予報だったのに。信じられない。せっかく洋服も気合入れたし、お化粧だって頑張ったのに。どうせそうなることはわかってた。すっごい楽しみにしてたもん。


「せっかくちゃんとしてきたのに」

「く、くくく」

「何笑ってんの」


誰のためにこんなお洒落してきたと思ってんのさ。若干イライラしていれば、宮地は本当に嬉しそうな顔で笑った。


「いよっしゃー!俺の勝ち」

「、はあ?」


わけがわからなくて、つい素っ頓狂な声を上げてしまう。満面の笑みが可愛いとか思ってない。思ってない。


「名字前に言ってたじゃん?楽しみにすればする分、天気が悪くなるって。んで、俺さ、試したくなって。俺と二人で遊ぶってなったら、どんくらい悪くなんのかなって」


段々と意図が分かってきて、顔に熱が集まりだす。


「天気予報は曇り、降水確率も10%だった。その状況で最悪の天気になったら、俺の勝ち。お前に告ろうって決めてた」

「、宮地」

「名字が好きだ」


近くで雷が凄い轟音を響かせる中、私は宮地に飛びついた。





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