「明日さぁ、午後から雨降るんだってよ」

「あァ、らしいな」

放課後の教室。各々が部活や委員会やら、あるいは家に行ってしまって、2人だけになった。そう、今日は日直。花宮と2人で日誌から簡単な掃除までをこなす。と、言っても彼は殆どやらない。まあ、初めから期待はしてない。私以外には猫被っていい子ちゃんな癖に、私にだけはこの扱いだよ。なんなの。

「んー、午後からっていうのがいやらしいよねー。どうせなら朝から降ればいいのにさ」

「いつ降ろうがウザってぇもんはウザってぇけどな」

「まあ、そうなんだけどね」

でも、朝から降るなら傘持って来るのも仕方ないかーってなるけど、帰るときだけしか使わないって嫌じゃない?折りたたみも地味に重たいし、普通の傘は長くて邪魔だし。

そう言うと、花宮はニヤリと口角を上げた。

「んじゃあ、持って来なきゃいい」

「え、濡れて帰れって言ってんの?」

「それもいいかもしんねぇなぁ」

「はぁ?」

言っている意味がわからない。持ってこなきゃ、濡れて帰るしか無いじゃん。

「濡れて帰りたいならそうすりゃいい。俺は普通に傘持って来るけどな」

「それって、忘れてくれば入れてやるよって意味だったりして?」

「察せバァカ。日誌出しとけよ。じゃあな」

ポイッと机に乱雑に放られた日誌。逃げるように教室を出て行った花宮を追いかけようとするも、自分の欄がまだ埋まってない。策士め。ズルい奴。追いかけようにも追いかけられないじゃん。

日誌を書きながら空を見る。綺麗な夕焼けが教室を照らす。明日午後から雨が降るなんて、私は知らない事にした。





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