「…………」

「…………」

気まずい沈黙が流れる。彼女は俺から目をそらさず、ぽかんとしている。俺も目をそらせず、意図せず見詰め合うような形になった。



02:友人と彼女




「…洸ちゃん、いますか?」

「こうちゃん?」

「鶴見洸季…」

「あ、わり、鶴見な。あいつ部屋で寝てて、ちょっと待って」

消え入りそうな声で何とか声を絞り出したとでも言うように、彼女は俺に尋ねてきた。動揺しまくっているのがわかる。俺も若干口篭りながら、急いで問題の友人の部屋へ駆け込み、肩を揺する。

「おい、おい!鶴見!お客さん!」

「ん…、あ、わり、寝てたー」

「なんか制服着た女の子、来てるけど」

「あー、由紀子かなー?」

目を擦りながら出て行く鶴見になんとなく着いていく。由紀子?

「おー、やっぱ由紀子か。いつも申し訳ない。さんきゅー」

「あ、洸ちゃん!今日おばさんいないって言ってたからさ。お友達来てんのに何かごめんね」

さっきとは打って変わってしっかり話す彼女を、俺はいつの間にかまじまじと見ていたらしく、俺に気付いた彼女は若干表情を硬くした。

「あの、さっきはありがとう、ございます…」

「あれ、なに?緊張してんの?あ、丸井、こいつ隣に住んでる俺の幼馴染の由紀子。あ、同い年だぜ?」

「…えー…と、戸田由紀子です」

「丸井ブン太。シクヨロ」

「、よろしく?」

「じゃあ、晩飯ありがとな。後でまた来いよ。こないだ言ってたCDかしてやる」

「マジ!?ありがっとー!」

急にテンションの上がった戸田、さんは、はっとしたようにしおらしくなって、じゃ、と言いながら自分の家(隣)に帰っていった。

「何あいつ!うける!」

あんな人見知りじゃないくせになー!なんて笑っている鶴見。その手に持っている盆の上には、普通にうまそうな家庭料理が数品並んでいる。もうそろそろ六時だし、帰るか。

「俺そろそろ帰るわ。いろいろさんきゅー」

「いやいや、俺こそ急に誘ってごめんな!また来いよ!」

鶴見に玄関まで見送られて、手を振りながら家路に着く。ふと隣の家の「戸田」という改札を無意識に目に入れて、すぐに逸らした。







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