丸井君が凄く嬉しそうに絵を受け取ってくれて、私も心の底から嬉しくなった。沢山写真を撮ったから、またそのうち描こう。二枚はいらないって言うかも知れないから、あくまで自分の趣味と、絵の練習。この写真の丸井君はどれも生き生きしていて、見る度に楽しい気分になる。
09:君のおかげ
「由紀子ー、丸井からメッセージきた」
「私宛?」
その日の夜、いつものように部屋でくつろいでいると、自室のドアがノックされて洸ちゃんが入ってきた。ひょいっと投げられたスマホを慌てて受け取り、画面を覗く。『戸田ちゃんありがとう!って言っといて!』の文字と、部屋の写真が付いていた。
「わー、飾ってくれてる…!洸ちゃん、こちらこそありがとうって言っておいて!」
「もうお前ら直接やれよ」
そういって、洸ちゃんが自分のスマホをささっといじる。そして何事もなかったかのように私の漫画を読み始めた。ちゃんと返事してくれた?と聞こうとしたそのとき、私の携帯から通知音が鳴った。確認すれば知らないアドレスからで、本文をよく見ると、さっき見ていた名前がそこにもあった。
「丸井に教えといたから」
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戸田ちゃんへ
鶴見にアドレスもらった。
勝手にごめんな。
絵、改めてありがとう!
めちゃくちゃ嬉しい!
母ちゃんも弟もすごいって言ってた
前に自信なさげなこと言ってたけど、
俺戸田ちゃんの絵好きだわ。
もっと自信持っていいと思うぜ!
お互い頑張ろうな!
丸井ブン太
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改行されているので下にスクロールすると、そこには丸井君と、丸井君そっくりの小さい二人の男の子がピースしている写真が貼られていた。凄く楽しそうな写真。私まで楽しくなる。
そうだ、今度はこの絵を描こう。この幸せそうな絵を描きたい。そして、丸井君がもっと喜ぶ絵が描きたい。最近は高校のこととか、スランプとか、色々なことが積み重なって、確かに後ろ向きだった。でも丸井君のお陰で、そんなのどうでも良くなってきた。うん、私も頑張ろう。自信、持とう。
なんだか携帯も私の心も熱かった。丸井君に伝えたいことを、必死に文字に起こしていたからかもしれない。気付いたら、洸ちゃんはこちらをみてニヤニヤしていた。
「あーあ、夢中になっちゃって」
なんだか腹が立ったので、近くにあったクッションを投げつけてやったんだけど、流石にバスケ部には敵わなかった。悔しい。
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