総合運動公園は、その名の通り、色々なスポーツを行う施設が揃っている。テニスコートも充実していて、立海も試合なんかでよく使用しているので、勝手知ったる場所である。いつも通り更衣室で着替えを済ませ、コート脇の木陰のベンチでラケットの調整をする。

「もうだいぶ寒くなってきたな」

ジャッカルが俺の隣に腰掛けながらそう言って、同じようにラケットを弄る。

「だなー。ここ、木陰になってるから夏は結構涼しくていいんだけどな。今の季節は寒いぜぃ」

ジャッカルも小刻みに体を揺らしながら体を冷やさないようにしている。俺はラケットを弄るのをやめて、木陰から一歩外に出た。

「日が当たるとちげーなー」

「ブンちゃん、そんなとこにおったら焼き豚になるぜよ」

「仁王てめぇこのやろ!」

そんなやり取りをしていると、フェンス越しに見慣れたクラスメイトの顔が見えた。バスケ部だけあって背の高いそいつは、隣の誰かを見ながら笑っている。



06:約束の土曜日



「おす鶴見!」

「おー、来たぜー丸井!そして由紀子も連れてきた」

「おはよー…朝からいるの?大変だね。試合がんばってね」

若干いつもより開いてない目を細めながら、戸田ちゃんがフェンス越しに笑う。

「戸田ちゃん眠そうだな」

「いつも昼過ぎまで寝てるもんなー!さっき叩き起こしてきたとこ!」

「大声で言わないでよ!てかばらさないでよ!恥ずかしい!」

鶴見の腕をぽかぽか殴る戸田ちゃんに、笑いがこぼれる。今のでだいぶ目が覚めたようで、いそいそとカメラを手にした。

「早速一枚撮ってもいいかな」

「おー、いいぜぃ」

「ブンちゃんそんなとこで何しとん」

カメラに向かってポーズを決めていると、仁王が近付いてきた。戸田ちゃんは、仁王の姿を確認するや否や、ピシリと固まってしまった。

「誰?何でカメラなんぞもっとん」

冷たい目で見下ろしながら、低いトーンで戸田ちゃんに問いかける仁王。自分達がモテると自覚してからは、こういう、出会いを求める女達のことを本当に嫌悪していた。

「仁王、違うんだよぃ。俺の友達だから」

「よっ!仁王」

「鶴見もおるんか」

「こ、洸ちゃん…誰なのこの人知り合いなの?何でこんな怖い人らしかいないの」

もはや涙目の戸田ちゃんは、鶴見にすがりつきながら小声(のつもり)で耳打ちしている。

「聞こえとるんじゃけど」

「ははは…」

とりあえず仁王には、戸田ちゃんが無害であることと、こうなった経緯、写真は許可していることを伝え、後日描いた絵を見せる、という条件で納得してもらった。







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