◆会話文など短いものの詰め合わせ。
◆ツイッターのログも含みます。
◆追加しても更新履歴には載せません


■ 没ネタ/20150813

△同棲シリーズ

 はあ、と大きく息をついて体内にくすぶり続ける熱を逃がす。体中舐められて齧り付かれ貪られたポルナレフは今夜も満身創痍だった。爪先から頭までピリピリと痺れるような余韻は未だに抜けきらない。
「大丈夫か」
 聞きなれた低い声がふわふわしていた意識を引っ張りあげてくる。意識して呼吸を大きくしながらうっすらと目を開けると、乱れたポルナレフの髪をそっと撫で付けている恋人が心配そうに眉尻を下げていた。ん、と頷いて両手を伸ばすと慣れた手つきで膝の裏と背中に腕を回した承太郎が音もなくポルナレフを抱き上げる。体を絡め取る腕は柔らかな拘束にも似ていてどこか落ち着く、でも悔しい。不本意ながら慣れてきてしまった独特の浮遊感の中、逞しい首筋にぎゅっと抱き着いて体重を掛けすぎないように気を配る。それでも男としての矜持が早く降ろしてくれと訴えるので、抱き上げたまま頬ずりして甘える恋人に掠れた声を投げた。
「なにしてんだよ…」
 頼むから早く。そう付け足すとこめかみの辺りに柔らかいものが触れてから大きな影がゆっくりと動き出した。音も立てずに歩く承太郎は疲れてぐったりとしたポルナレフに負担を掛けないようにと足取りが緩い。とはいえ二人で暮らすには少し手狭なアパートの廊下はさして長くない。あと少しの辛抱だ。
 バスルームにたどり着くとひとまずバスタブの淵に下ろされる。無機質な冷たさが尻からのぼってふるりと肩が揺れると、シャワーの温度を見ていた承太郎はちゅっと頬に口付けてポルナレフを宥めた。子供を寝かしつけるような優しいそれになんとなく腹が立って、バスチェアーへ座ってその上に乗るようにと促す腕にがぶりと噛み付く。微かに笑みを含んだ吐息が聞こえた。
 温かいシャワーが肌を伝うと汗やその他の体液が押し流されていく。万が一ポルナレフが寝入ったとしても落ちないよう、背中には腕が添えられたままだ。先ほどまでポルナレフを苛んでは悦ばせた指がシャワーを操り、安心感に身を委ねると自然と筋肉から力が抜けていった。与えられた強すぎる快感の余韻と眠気の合間で揺蕩っていた意識も幾分かはっきりしてようやくひと心地つけた気分だ。浴室にはバスタブに注ぎ込まれてどうどうと暴れる温水の音が響いている。
 承太郎の膝の上に座るのは特に珍しいことでもないのだが並んで立つと見えないつむじや表情を隠したがる恋人がよくみえるので、ポルナレフは後処理も何もかもを任せて頭を抱き込んだ。喋りにくそうなくぐもった声で見えねえと抗議が届いても背筋を伸ばすのも億劫だった。
「そういえば、ポルナレフ」
 べたべたしたものを流し終わった承太郎がまだ赤く色づいてもっちりと柔らかい後孔に指を這わせる。何もこれからもう一戦挑もうというわけではなくぶちまけられたものを排出するために、だ。そうは分かっていてもまだ僅かに口を開けてひくつくその場所を撫でられると背筋が震える。ふうふうと呼吸を整えながら腹の中に留まっている残滓を掻き出していく指を締め付けないよう意識を集中させて、視線だけで続きを促す。
「お前少し太ったな。腹が柔らけえ」
「……ハァ?」
 バキバキに割れてるっつの!と怒鳴ってやりたかったがずり落ちないよう背中を支えていた承太郎の腕が前に回されて腹筋に触れた。ぷに、と弾力の感触。
 いやいやいや、今は前かがみになってるから、どうしても皮が、なあ?いくら最近走り込みをちっとばかし怠けてるからって、昼休みにパフェ食ってるからって、そんなぷにっとはなってないぜ。……たぶん。
 ポルナレフが冷や汗を背中に滲ませているとは露知らず、承太郎は楽しそうに声を弾ませる。
「抱き心地が良くなった」
 処理が終わったらしい承太郎は爆弾発言でとどめをさすと再びポルナレフを抱えてバスタブの中へそっと下ろし、ご機嫌な様子で鼻歌を歌いながらボディソープを泡立てはじめた。
 足を掴んでスポンジを滑らせ、自分も湯に浸かりながら全身をくまなく綺麗に磨いていく。掃除は嫌いな癖にこういうことは率先してやりたがる承太郎の『面倒くさい』の基準がよくわからない。自分が過ごす部屋にももうちょっと愛着を持って―――。
「そうじゃねえって!」
 横道に逸れる思考に突っ込むと驚いてちょっとだけ目蓋を持ち上げた承太郎が不思議そうに首を傾げている。お前じゃない、いや承太郎の発言のせいではあるんだけど。
 自分で腹部に触れると確かに柔らかかった。指先は固いものにも触れたので筋肉が落ちたわけではないとも分かったが、まずい。これはものすごくまずい。ちらりと恋人を窺うと承太郎は相変わらずポーカーフェイスをちょっとだけ緩めながらポルナレフの体を綺麗にしていっている。その均等の取れた肉体と綺麗な顔はどこに出しても恥ずかしくない美丈夫だ。更に頬が引き攣っていく。
 ポルナレフは美しいものが好きだ。見事に咲き誇った花、数々の名画をルーヴルで鑑賞したこともあるし、試行錯誤しながら着飾る女性はもちろん、見た目も内面も気高い恋人のことも、自分の筋肉もそうだった。鍛え始めてようやく腹筋が割れた日には喜んで妹に見せにいっては暑苦しいから服を着てと怒られたこともある。それが今はどうだろう。腑抜けて堕落してしまった。このままでは筋肉までも脂肪になってしまう!
 そこからの決断は早かった、なにせやる事は一つだ。甘ったれて堕ちた精神ごと自分の肉体を鍛えなおそう、と固く決意する。何くれと抱き上げて世話をしたがる恋人の腰を守るためにも!
「……ポルナレフ?」
 トレーニングのメニューを考えながら低く笑う姿に困惑しきりの承太郎の声は、ポルナレフの耳には届いていなかった。

■ 無題/20151124
△同棲シリーズというかn巡目というか
△ジョルミス+承ポル(ジョルノ不在)

「もう!おれは!ここに住む!」
「突然どうしたんだミスタ。確かジョルノと同棲を始めたんじゃあなかったのか?」
「1ヶ月前からな!」
「彼の部屋に何か問題でも?」
「すげー広いしキレーだよ…問題っつーのはアイツ本人の方だ」
「?」
「毎晩…いや毎日毎日、昼も夜も関係なしに引っ付いてくるんだよォ…!」
「…恋人同士なんだし困る事もないだろう。可愛いじゃあないか」
「抱き着いてキスくらいならな!手料理食いてーっていうから人がわざわざキッチン立ってるってのに、後ろからしがみついてきて『まだです?』とか『デザートから食べたい』とか!」
「ああ…」
「挙句の果てには実力行使でソッチに雪崩こもうとするんだぜ!?信じらんねー」
「まあジョルノも健全な10代だからな…」
「おれだってそうだぜ〜?ま、とりあえず今日の所はボイコットだ。ポルナレフさんとこならアイツも無茶苦茶しねーだろうしよ」
「お前がいいなら、いつまでも居ればいいさ。ただし、家に戻ったらちゃんと話し合いするんだぞ」
「ゲェ〜…気が重いわ…」

「いつまでも居ていい訳ないだろう」
「承太郎、おかえり」「じょ、承太郎サン…」
「言っておくが、今夜中には帰ってもらう」
「うげ!?」
「痴話喧嘩は犬も食わねーと相場が決まってる」
「そこをなんとか頼んますよ〜!今日だけでもいいんで!」
「嫌だね」
「ポルナレフさーん…」
「やれやれ…随分と冷たいじゃあないか、承太郎。自分と同じ行動を取るジョルノに同情してるのか?」
「!」「…」
「エッ…まじで!?」
「ポルナレフ」
「まじもマジだ。『お前の手料理が食べたい』と可愛いことを言うもんだから恋人は張り切ったのに、ちっとも可愛くないちょっかいを出して恋人を拗ねさせ、結局3日は手料理にありつけなかった事がね…承太郎にもあったのさ」
「へ〜〜〜?あの承太郎サンがね〜〜」
「昔の話だ」
「つい一週間前にも起こった出来事を『昔』と言い張るお前の神経の図太さにも私は驚くよ」
「ギャハハハ!マジかよ〜!らっぶらぶじゃないスか!」
「そこは否定しない。今も尚積極的に求めてくれるのは嬉しいが、まさか蜜月期間の恋人たちと同じ事をしているとは……恥ずかしいな」

\ワイワイ/
「……」

「笑った笑った!なんか里心ついたわ…オレ帰る」
「それがいい。ジョルノも健気にお前を待ってることだろう……喧嘩になってもいいからお互いの意見を言い合うといい」
「そーする。お邪魔しました〜」
「またな」
バタン

「…それで、承太郎。いつまで拗ねている気だ?」
「拗ねてねえ」
「違うというのなら顔を見せてくれよ。キスがしたいんだ」
「…。てめーは…歳取って食えなくなったな」
「何年一緒にいると思ってる。お前の扱いくらい慣れるさ」
「フン…可愛くねえ」
「承太郎はわたしを『可愛い』とは言わなくなったな」
「…ベッドの外では、な」
「…」
「てめーが悪いんだろうが」
「いーや最中にばかり言うお前が、悪い」
「だからって外であんなツラする奴があるか。パブロフの犬か」
「だからおめーが!悪いんだろうが!起き上がれなくなるまでヤッた挙句最中には可愛い可愛いって洗脳するみてーに言いやがって!」
「事実を言ってなにが悪い。あの時だってジェラートひっくり返して泣きべそかいてたてめーが可愛いと思ったからそう言っただけだ」
「耳元でぼそぼそ囁くから余計に思い出しちまったんだよッ」
「ほう。でかい声で叫んだ方がお好みだったか」
「んなこと言ってねー!」
「そうやって必死でがなり立てるところも『可愛い』ぜ?ポルナレフ」
「!!!」
「どうした、顔が赤いぞ」
「体を撫で回しながら言うな馬鹿ッ、…承太郎!」
「お邪魔虫はいなくなったんだ、いいだろ」
「……ばか」

■ やぶへびはつつかない/20150419
(原作中)

 なんだか近頃、二人の距離が近い、ような。

 その日ぼくは少し気が緩んでいたのか、軽い怪我をした。見た目の出血程痛みは無かったし、大丈夫だとは言ったのだけれど「何かがあってからでは遅い」とわざわざ病院に連れて行かれてしまった。付き添いまでしてもらって申し訳ない気持ちで一杯に……いや、ぼくの事はいい。肝心なのは、その日の二人の様子だ。
 ポルナレフの方はいつも通りだったと思う。ぎゃあぎゃあやかましくて、スキンシップが多くて。包帯を巻いて貰ったばかりの腕に触れてアヴドゥルさんとぼくに怒られて、それでも子供っぽい表情をしていた。……顔が真っ赤だった、という事を除けば概ねいつも通りの彼だった。
 もう一方の彼はというと落ち着かない様子……だった。ジョースターさんと話していた彼と何度か目が合ったが、優しいからね、怪我をしたぼくを気にかけてこちらを見ているんだと思っていて。だけど突然苛立ちを露にした彼はそのまま部屋を出ていってしまった。
 そこで漸く、二人に何かあったんだと気付いた。
 女々しく引っ付いてくるポルナレフをべりべり剥がして、彼を追い掛けたよ。
一緒に歩きながら少し話をして、改めて見るといつもの落ち着いた表情に戻っていたから安心した。彼が庇っていたけれど大方あいつが余計なことをして心配を掛けたか、失言したか、その辺りだったんだろうと踏んでね。
 彼らは同室だったし顔を合わせればあっさり仲直りするだろうとも思ってたから、大して心配もしていなかった。

 だけど彼らはその日の夜、食事の席に現れなかった。朝にはなんてこと無いぜって顔で二人してご飯を食べていたけれどね。……恐らくだけど、その日に何かあったんだと思う。

 それから自然に二人の距離が近付いたというか……つまりパーソナルスペースにあっさり入ってるんだ、二人とも、お互いに。元々細かい事は気にしない二人だったから、注意していないと分からない程度のものだった。「仲良しさんなのね」と言われれば納得するような、微かな変化。あとはまあ、ポルナレフに肩を抱かれたりすると視線が痛かったりもした。
 ぼくは安易な結論を出したりはしないよ。単に凄く仲が良くなった!ってだけかもしれないし…家族の為に戦う者同士、近距離スタンド使い同士、話が合うだけかもしれない。
 …………ああでも、馬に蹴られるようなことにはならないといいな。


■ おやすみ/20150731
ポルナレフが「今日はもう何もしねえ!」とソファーに飛び込んでいった。なんでも連日面倒な客に絡まれたらしい。人のもんに手出しして難癖付けた糞爺には後で『話を付けにいく』として…。近頃学校がバタ付いているせいで家の事を任せきりだったし、今日はおれが代わろう。……が、家事をしないポルナレフが何をするか気になったので、合間に観察する。

12:46
ピクリとも動かない。寝ている訳ではないので「何もしない」を有言実行しているんだろう。視線が暇そうにあちらこちらをさ迷っている。本でも読んだらどうだと声を掛けたら「やだ」と一刀両断された。

13:02
昼食を作り終えて様子を見に行くと気持ち良さそうに寝ていた。起こすのも忍びないのでベッドまで運んでやる。飯は冷蔵庫にぶち込んで掃除でもするか、と立ち去ろうとしたが服を全力で掴まれた。……起きてたのか。キスするとしがみついて離れなくなったのでそのまま二人で仮眠を取る。

15:21
「するのかと思った」こいつおれを性欲の権化か何かと勘違いしてるんじゃあねーか。弱ってる奴に手を出すほど落ちぶれちゃいねえと言えば目を丸くして、何故だか楽しそうに笑い出す。いい加減腹が減ったので飯を温め直そうと寝室を出た時「そういうとこ、ほんと好き」と爆弾を落とされる。……性欲の権化じゃあねえが、煽られりゃあ沸き上がるもんがあるだぜ。嬉しそうに細められた目が綺麗で、夜には泣かせようと固く決心する。

16:35
腹ごしらえを終えて掃除に取り掛かる。とはいってもポルナレフが何かと手を掛けているので軽く掃除機をかけるだけだ。耳障りな稼働音が気になるのかポルナレフが此方を見ている。「こっちはいいから、ベランダやってくんね?」欠伸を噛み殺しながら言ったポルナレフはいつ買ったのか憶えていない雑誌を眺めている。朝より顔色が良かったので安堵した。

18:47
「承太郎が成長しててお兄さん嬉しいぜ〜」と労われる。以前家の事について揉めたのを気にしていたらしい。これくらいなんでもねえと返すと「じゃあ買い物も頼んだ!」とポルナレフはテレビに齧り付いた。一人でいくのは構わねえが、傍に居られないとつまらない。さっさと終わらせようと大股で部屋を後にした。

19:17
家に帰るとリビングは静かだった。耳を澄ませるとシャワーの音がする。いつもは急かさないと風呂には入らないくせに。さっさと寝て明日への鋭気を養うつもりなのか?夕飯の準備だけ済ませ、学生業に精を出すことにする。

20:58
間延びした声で名前を呼ばれた。「勉強終わったか?」扉から少しだけ顔を覗かせる仕草が可愛いと思うほどにはこいつに惚れているので、頷いて手招きする。いそいそと膝の上に乗って笑うポルナレフは髪をおろしてリラックスモードのようだ。何度もキスをして硬い背中を抱き寄せる。「腹へった?」睫毛が触れ合う距離のまま首を横に振る。「じゃあいいよな!」声を弾ませたポルナレフは服を脱いで先程までのじゃれあうキスとは別の、大人のキスとやらを仕掛けてくる。
脱がせるのも好きだから勝手に脱ぐなって言ったんだがな。やれやれ。

21:32
さっきの風呂の最中、自分で解しておいたらしくそこはぐずぐずになっていた。「もう、いいっつの…!はやくいれろよ……ッ」てめーを陥落させてよがらせるのが好きだってのに、人の楽しみを奪ったお仕置き、と言う奴だぜ、これは。めそめそしながらもおれの言うことは聞かねえんじゃあ、仕置されても文句言えないだろう?「い、言ったらおまえ、ほんとに勝手するだろー、が、…ッあ!」
もって三十分てとこか。しばらくはポルナレフの泣き顔を堪能させてもらおう。

22:07
「あ、あっ……あぁ…ッ」「も……好きに、していいからぁ……!いれ、て」ようやっとお許しが出た。流れ出た先走りでポルナレフの腹も、シーツもぐちゃぐちゃだ。涙と涎で濡れた顔を拭いながらキスをすると、安心したのかポルナレフが目を閉じて薄く微笑んだ。これからはめそめそなんて可愛いもんじゃあなくって泣き叫んでもらうつもりだ、悪いな。

22:50
「やだ」「むり」「もうイきたくない」まで言わせて満足した。ぐったりしたポルナレフの体を綺麗にして、メイクし直したベッドへ寝かせる。「昼間の気遣いはどこいっちまったの」拗ねた声に振り向くとポルナレフの瞼は痛々しく腫れていた。そっとそこにキスして謝罪する。睨み上げてくる青い瞳はまだ臍を曲げていると主張していたが、髪を撫でているうちに機嫌は直ったようだ。滅茶苦茶に抱いて、ご機嫌取りをする時間は気に入っていた。おれも大概イカレてるらしい。

23:11
飯はいらないというのでそのまま眠ることにした。明かりを絞って抱き込んだら数分もしない内に寝息が聞こえてくる。甘やかすつもりで柔らかい髪をくしゃりと乱して額に口付けるとおれの気分がほぐれていく。不思議だ。
……おやすみ。

■ あつい/20150731
「あっちぃ……この暑さでエアコン付けらんねーとか地獄かここは!」
「……NYだぜ」
「わかってるよアホッ。だいたいてめーが『電化製品なんざ叩きゃあ直る』とかぬかしてエアコン破壊しなきゃこんなことにはならなかったんだぜ!?」
「おれが直す前から元々イカレてただろうが」
「あれは確実に直す音じゃなくて破壊音だったね。リモコンにすら反応しなくなったし」
「…どっちにしろ明日には業者が来る、我慢しろ」
「う〜〜〜〜……耐えらんねえよォ」
「シャワーでも浴びるか」
「! そりゃ名案だ!汗流してさっぱりすりゃあマシになる!」
「タオル持ってくから先に行ってろ」
「メルシー早く来いよー!」

「うは!気持ちいい〜!」
「……犬の水浴びか」
「うっせ、温水なんか浴びたくねーもん」
「風邪引いても看病してやらねーぞ。オラ、いいから普通のシャワーにしろ」
「へーい…」
「……思ったより長持ちしなかったか」
「ん? ああ、項んとこのヤツな。もう消えてる?」
「ほとんど目立たねえ」
「ふぅん。……もっかい付ける?」
「…誘ってんのか」
「言わなきゃわかんねーのかよ」
「フン。あとで喚くなよ」
「ん……――っ、ばか、肩はやめろって…!」

■ 明けまして…/20150101
「ボンナーネ!」
 長い長いカウントダウンのキスを終えて、ポルナレフが赤い頬のまま叫んだ。窓の外は打ち上げられる花火に負けないほどの歓声が溢れかえっている。
「今年もよろしくなァじょうたろう!好きだぜ〜」
 アルコールに火照った腰を片手で抱き寄せるとへにゃりと笑った恋人が上機嫌な様子で顔中に唇を押し付けてくる。掠める鼻息が擽ったい。
 顎を捕まえて、唇に食らいつく。蕩けた青い瞳が明かりに照らされて美しい。
「おれも…」
 睫毛が触れる距離で同じ気持ちを言葉にしたが、外の喧騒にかき消される。しかし舌打ちしそうになった口を口で塞がれた。苦しいほどの力で抱きつかれて、しっかりと言葉が伝わった事を知った。
 一つになった二人の影がリビングから消えていくのに時間は掛からなかった。

■ Merry X'mas!/20141224
 ボンジュール……ん、花京院?久しぶりだなァ!元気してるか?
 ああ、承太郎なら出かけてるぜ。ケーキがないとクリスマスじゃねえとか言って買い物行っちまった。あいつに用事か?おれはもうご馳走作りも終わって暇なんだよ、あいつが帰って来るまでちっと付き合えよ。
 なんで承太郎の家にいるんだって?だっておれら、恋人同士だからな!ノエルは家族で過ごさなくていいのかって聞いたんだけど、ジョースターさんたちも夫婦水入らずでデートなんだってよ。じゃあおれたちもそうしようっつって……。
 なんだよ、承太郎の奴、おめーに何も言ってなかったのか。おーい、花京院。聞いてるかー?
 あ、…おう、メルシー!へへ……なんか祝われるのって嬉しいな、くすぐってえけど。そっちも早く良い人見つけろよ!おめーの結婚式には友人兼兄貴分として張り切ってスピーチしてやっからさ。――こ、この野郎!バッサリいらねえとか言うな!
 おめーも承太郎も、なんでおれにはオブラートに包まねえの!?特に承太郎ときたら恋人になっても甘い言葉一つ言わねえくせに、やれ足音がうるさいだの、朝洗面所を独占するなだの、文句はいっちょ前なんだぜ。可愛くねーこと言われたら日本食抜きにしてやってるがな。
 そうそう、ちこっと前までは掃除も洗濯もおれ任せにしてやがったんだぜ!……そりゃあおれだって嫌々やってたわけじゃあねえし、最近は二人で分担してっけど、………あーもう、感謝してほしい訳じゃなくてよ。
 なんで好きって言わねえんだよって聞いたら、日本人はそうそう口にしねえもんだとか抜かしやがるし。人種としてのセイシツじゃなくて、なんで言わないのか聞いたのに!つーか花京院、おめーもそうなの?日本人ってやつはマジに愛の言葉を伝えねえのか!?―――ありえねえ!
 だって好きな奴が目の前にいるのに、なんで我慢するんだよ!?勿体無いだろ!好き合ってるなら尚更嬉しいじゃあねえか、好きって台詞はよォ…。
 あ?…もう何回もねだったよ、言えってな。しつこくすると目ェ逸らすだけじゃあなくて勉強してくるって部屋に篭っちまうから最近は……、…?
 『恥ずかしい』ィ?なんで?おれしか聞いてないのに、なんで恥ずかしいんだよ?わっかんねえなー。―――あ、おかえり、承太郎。
 じゃあ替わるな。おめーもちゃんと勉強しろよ、学生くん!

「悪かったな、席を外してて。……おい、何を笑ってやがる」
「…いや、すまない。付き合いたてのカップルは放っておけって聞くけど、本当だと思ったんだ」
「……あいつ、何言いやがった」
「本人は愚痴のつもりだろうから、愚痴なんじゃあないか」
「どういう意味だ」
「頼りがいのある君も同年代の男だってわかって、ぼくはなんだか安心したけどね」
「…花京院」
「怒るなよ。あまりぶすくれてばかりいると、ポルナレフが不安がるぞ」
「………」
「自覚はあったんだ」
「やかましい。大体てめー、何の用で掛けてきやがった」
「せっかくのクリスマスだから、友人の恋を後押ししようと。…いつの間にか成就していたようだけど」
「!」
「バレてないと思ってたのは本人たちだけだよ」
「……」
「あ、そうだ承太郎、ポルナレフに伝えておいてくれないか?」
「今度はなんだ」
「そう怒らないでくれよ、善意なんだから。次からそういう話はイギーにでもしてろって」
「…? 本当にあいつ、何を言いやがったんだ……」

■ ツイログ
★言えない我が儘
「今度は日本へ来いよ」大きな体に不釣り合いなバッグを下げて承太郎が笑う。素直に頷くことはできなくて曖昧に肩を竦めた。一言くれれば飛びつくのに自分から告げる勇気も持てなくて革靴を睨み付ける。「また再来月に」振り返りもしないで歩き出す背中に届けばいいのに。「一緒に住もうぜ」

わんわんとアナウンスが響き渡る。そろそろ搭乗口へ向かわなければ。俯いたままの男に約束を投げ付けて歩み出す。返事はなかった。家族の眠るこの地から引き離すのは酷なことだろうか。共に過ごす日は温かいのに、今回も口に出せなかった言葉が胸に重しを乗せているようだ。「一緒に来いよ」

★愛を/ヤンデレ
「承太郎」呼ぶ声が震えている。赤い指で頬を撫でるとようやく震えが止まったらしい。心音と一緒に痛む傷が愛おしくて優しく唇を重ねる。「なあ、もういいだろ、手当て」自分の方がずっと苦しそうな顔をするポルナレフを抱き締めて微笑む。傷に涙がしみた。ただ、愛を目に見える形にしたかっただけだ。

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