どれだけの時間が経ったのだろう。
瞼の上からちかっ、と光の存在を感じた。
・・・・・ようやく、天国に着いたのかな・・・・・。
うっすらと瞳を開かせる。
―あっ、目を覚ましたわよ
誰か、女の人の声・・・・天使様かな?
ぼやける視界の中へ一生懸命手を伸ばす。
―あらあら、可愛いわねぇ
―ああ・・・・
もう一人、男の人の声・・・・そこでようやく私の意識は覚醒した。
同時に驚愕。
・・・・伸ばした自分の手は、まるで紅葉のように小さくなっていた・・・。
(なに、これ)
「あう、うう」
出そうとした声は全て舌足らずで、母音だけの発音。
更に、その向こうに見えた人物にも驚いた。
女の人は、長くて黒い髪で、綺麗な黒目だった。
私は、この人を知っている。
知っているからこそ・・・この状況が信じられない。
だって・・・・この人がいるのは・・・・。
―ほら、あなた、抱いてあげて
ふわ、と私の身体が浮き上がる。
そこで分かった。
私はこの女の人にずっと抱かれていたのだと・・・・そして、そのくらいの大きさに身体が縮んでいたということを。
―うわ、軽いなぁ
―当然よぉ、赤ちゃんですもの
私はそっと、男の人の腕の中に収まった。
男の人は、黒い髪を上でくくってて、額に傷がついていて。
―なぁ、ロク、ロク。父ちゃんのこと、分かるか?
すみません、分かるも何もよく知ってます。
でも、有り得ないんですよ、だって・・・・・あなた達は、本の中の住人の筈なんですから。
・・・・・・シカクさん、ヨシノさん・・・・・・・・。
「あー、うー」
―おお、返事した
―本当、可愛いわねぇ
私を抱くシカクさんの後ろに鏡が見えた。
そこにいた私の姿は
・・・・紛れもない赤ん坊のそれをしていました・・・・・・・。
どういうことですか、これ。
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