「まあ、これで簡単な説明は終わりよお。あとは・・・直に連れていって聞かせてもらいな」
「ど、どういうことで・・・」
「説明長えよ、親父。待ちくたびれちまったぜ」
どきん、
ばくばくと跳ね上がる心音が、
静寂な室の中にいるはずなのに、私の耳を支配しました。
いつから、そこにいらしたのでしょうか
まるで、霧のように、誰にも気付かれずにいらしたかのように、
「へえ、お前が俺の影武者、ねえ」
漆黒に塗れた髪、
けだるげそうな、けれど威厳を感じさせる、
私めを映して下さる瞳の色は、お館様にとても似ていて、
吸い込まれそうな黒。
「・・・若、様・・・・・」
憧れ続けた存在のその人が、
そこにいらっしゃいました。
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