窓の外が真っ暗になった時。

「・・・・よし、寝てるな・・・」

紅蓮は、こっそりと開けたドアの隙間からベッドに横になっている美朱を確認してドアを閉じた。
美朱が起きないよう、静かに階段を下りる。
今日は・・・・いや、今日も深夜からのアルバイトをしに行く。勿論、生活費の為だ。
両親の残してくれたお金にも限界というものがある・・・紅蓮は美朱に黙ってバイトを幾つか掛け持ちしていた。
特に割のいいのが深夜の交通整備や工事現場の手伝い・・・今からその現場へ向かうところだ。

(こりゃ、明日も居眠り決定だ)

夜から朝まで仕事、朝から夕方までは大学・・・完全に昼と夜が逆転した生活。大学は最早寝床と化している。
美朱に薦められたのと、家の近くにあったのと・・・たったそれだけの理由で入った大学の費用も安くはない。
日がな一日ぼーっとするか寝て過ごすかと、勉強なんぞ面倒でノートすら持たずに意味無く出席する。
・・・大学を辞めれば少しは家計も楽になるだろうが、どうしても辞めたくないない理由があった。

それが、さっき美朱が言っていた「中国哲学」

中国、という響きがかっこよかったので適当に選んで専攻したのだが・・・これが、普通の勉強よりも面白く感じた。
大学に入ってからはすっかりハマってしまい、家にもその関係の書物は増えた。
事実、他の教科の成績はほぼドベだが専攻の中国哲学の知識だけは誰にも負けていない。
中学、高校とずっとつまらなかった時とは正反対・・・今、初めて夢中になれるものと出会えて嬉しいから。

(受験頑張れよー)

義務教育ではなくなった分、美朱が高校に入れば学費は倍になるだろう。
バイトが増えるのはちとキツイが・・・美朱を高校へは入れてやりたい。
兄心というか親心というか・・・。

「うー・・・寒っ」

さすがに深夜は気温が下がっていた。
けれど、美朱の為にと思うと心の内からぽかぽかしてくる。
紅蓮は寒い中で少し微笑んだ。



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