「ほー・・・こりゃ全部貴重本だな・・」

閲覧禁止室・・ドアをそっと閉めて中の電気を点けた。そこには本棚が幾つも並んでいる。

「あっ、ほらお兄ちゃん。これが四神天地書だよ」

と、美朱が床に落ちていた本を拾い上げる。

「おー、これが・・・」

四神天地書を受け取り、早速目を通してみる。



"・・・是れは、「朱雀」の七星を手に入れた一人の少女が、神和(カンナギ)と共にあらゆる力を得て望みをかなへる物語で・・・
物語は其れ自体が一つの呪文になつており、読み終えたものは主人公と同様の力を得、望みがかなふ。"



・・・どうやら、文献の類ではなく・・小説のようだ。

「んで、お兄ちゃん。その先は何て書いてあるの?」
「・・・読めないのか?」
「うっ・・・!!」

図星、だな・・・。
まぁ、古い本だし・・・仮名使いも漢字も違う古語体だ。
高校受験用の古文知識じゃまだ読めないよな。

「どれどれ・・・えーと・・」



"少女、身売りの輩より友を救はんとす時、額に"鬼"の証を持つ少年現れ、其れを救ひ・・・・・"



「「えっ・・!?」」

そこまで呼んだ時、美朱と唯が驚愕した。

「ん?どうした?」
「こ・・・これ・・・・。」
「昨日あたし達が見た夢でしょ・・・!?何で・・!!」
「!?」

紅蓮はもう一度その一文を読んだ。
・・・人攫いは・・・身売りの輩・・・セコかったけどかっこいい男の子・・・って、この鬼の字の少年ってやつか・・!?

「本当だ・・・全部、美朱の日記に書いてあった通り・・・っ!?」

読んでいる途中でさらに仰天した・・・その次のページを声に出して読んでみる。



"朱雀の巫女となった少女は今再び、異世界への扉を開かんとす。共に立つは神和となる守護者・・少女の兄・・・・"



「・・・何だよ、これ・・!?」

少女の兄・・・・この少女が美朱ってんなら・・・兄は、俺のことじゃんか!
何だよこれ、何で俺達のことが・・!?朱雀の巫女?神和?守護者って、一体何のこと・・・。



カッ!!



「「「えっ・・・!!?」」」




その瞬間

本が、赤い光を放って

三人はその光の中に飲み込まれた――――――



残ったのは四神天地書だけ・・・ドサッと、床に本が落ちる。
開かれたページに、ある一文が浮かんだ・・・。



"朱の兄妹・・・巫女とその神和となるため異世界への扉を開け放った"




長い長い物語が今始まりを告げる



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