「うーん・・・」
それから何時間も経った頃だろうか・・・・ざっと本に目を通しても、心のもやもやはそのままだった。
四神と信仰・・・七星二十八宿・・・・朱雀、玄武、白虎、青龍・・・多くの本を残した奥田永之助。
何故大学にこの資料が置かれていなかったのか・・・著者の詳細を見ればすぐ分かった。
[1903年 一人娘の多喜子を刺殺した後自らも自害]
(・・・殺人者だったってことか・・・)
こんなにいい本を書く人の正体が、罪人。
そりゃあ、そんな不吉な本どこも欲しがらないだろう・・・多分、色んな所からたらい回しされてこの図書館に来たんだ。
しかも状態はほとんど絶版・・・。
だとすると、四神天地書はどこにあるんだ・・?
「あれ、お兄ちゃん?」
後ろから聞こえた声。このもんのすごい可愛い声は・・。
「美朱!」
「どうしたのよ、こんなとこで?」
振り返ると友達を連れた美朱・・・そういえばもう下校の時間か。
「お久しぶりです、紅蓮さん」
「おう、久しぶりだな唯ちゃん」
美朱の横にいた友達・・・唯が挨拶をしてきた。
・・・美朱と唯は幼馴染、小さい頃からよく一緒に遊んでいた。
紅蓮はそんな二人の世話係としていつも遊び相手になってからは付き合いが多くなった。
「美朱、四神天地書ってのどこにあるんだ?気になって探しに来たんだけど・・見つからねぇんだ。」
「え?四神天地書?それだったら・・・えーっと、何だっけ唯ちゃん?」
「閲覧禁止室、だよ」
「そーそー、そこにあったよ!」
成る程・・・そりゃ普通の書庫には無いわけだ・・。
「紅蓮さんもあの本見に来たんですか?」
「も・・ってことは唯ちゃんも?」
「はい。ちょっと気になることがあって」
「・・・・あー、もしかして昨日の夢の話?」
紅蓮の言葉に美朱が固まる。
「そうですけど・・・何で知ってるんですか?」
「んー、兄妹の間にはプライバシー無いってことさ」
「ちょっとお兄ちゃあああああんんん!!あたしの日記見たわねえぇぇぇええ!!?」
美朱が顔を真っ赤にして怒る。紅蓮はハッハッハと笑った。
「ちょっとセコイけどかっこいい男の子がねぇ・・兄としては見過ごせんわけよ」
「こらーーっ!!」
「図書館ではお静かに願いますっ!!!」
「「「すいませんっ!!」」」
三人の騒がしい様子に司書の人がものすごい至近距離で注意してきた。しかも大声・・・。
「ったく・・・美朱のせいだぞ・・」
「原因はお兄ちゃんじゃん・・・」
「まぁまぁ・・」
そうして、こそこそと三人は閲覧禁止室へと入っていくのだった。
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