ひゅう、と風が頬を撫でる。
いつもなら心地よいと思える里の風も、今日ばかりは憎たらしい。
ちりん、ちりん、と弔いの鈴の音は母さんの為だけに響く。

(ああ、)

人が死ぬってことは、こういうことなんだ。
少しの涙で視界が歪む。
母さんの為に泣ける感情がなかったわけではないと、不謹慎ながらほっとした。
喪に包まれた衣服、自分の服も黒一色。

今、母さんの葬式が終わろうとしていた。

人の終わりというものは、本当に呆気なく儚いものだ・・と、
以前死んだことのある俺だからこそ分かる。
一生の終わりが一気に近付く瞬間の恐怖は、ひどく恐ろしいものだ。

(どこかで、生まれ変わってくれたらいいな)

母さんも、俺と同じようにまた別の場所で生まれ変わってくれたら。
そう思うと少しだけ、気が楽になったような・・そんな気がした。

ひゅう、と相変わらず吹く風に小さく"さよなら"とだけ呟いた・・・・


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