PUNCH!
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用語集 []


謎の美少女との出会い


 何だかんだと出発するのが遅れて、もう夕方だ。早く次の町につきたいし、今こそこの"ランニングシューズ"の出番だ。

 普段走ることなんて滅多にないのでわからなかったが、なるほど、ランニングシューズと名の付く通り、かなり走りやすい。
 ただの靴に見えるが、これは最新技術を使った、走るための靴らしい。なんの技術かはわからないが、こうして歩いてみると違いがよくわかる。

 一年ほど前にホウエン地方から広まったこの靴は、今や旅をする少年少女の必需品である。
 なんでも、まだこの靴が発売されていないときから、この靴を履いてホウエン中を旅した少年が居たらしい。その姿を見ていた人たちの口コミで、ろくな宣伝もしていないにも関わらず、発売日には長蛇の列ができたとか。


 そんなことを考えているうちに、ヨシノシティが見えてきた。この調子なら予定してた時間につきそうだな。




「よーっし! ヨシノシティ到着〜!」

 そのとき、右側から黒い人影がオレの前に飛び出してきた。オレは避けきれずそいつにぶつかってしまった。

「いってぇー……。なんだよ、誰だ!」

「っ…………」

 オレが勢いよくぶつかったのは、赤い髪の少女だった。髪と同じ赤色の切れ長な瞳でこちらを恨めしそうに睨んでいる。
 やっべ、女の子だったのか。ここは謝った方が良いよな。


「ごめんごめん、いきなりだったから止まれなくてさ、お嬢さんお怪我はありませんか?」

 最後は少し紳士的な感じで言ってみた。まあ、ちょっとしたジョークだ。


「テメェ……バカにしてんのか」

 えぇっなんかめちゃくちゃキレてるよ。ヤベェよどうしよ! かなり思いっきりぶつかったからな、でもそんなに起こらなくても!

「ま、まあおちつけ! かわいい顔が台無しだぞ。笑顔大切に!な!」

 精一杯なだめようとしたが、彼女の怒りは収まらない。ていうかさっきより怒ってないか!?なんでだ!


「ボコボコにしてやる!」

 彼女はそう言うと、腰に付いたモンスターボールを構えた。
 えっちょ、展開が早すぎて話に着いていけないんですけど、なんかこれバトルする流れですか、目があったらバトルしようの合図ってやつですか!
 つられるようにオレもボールを取り出す。そういえばまだ名前決めてなかったっけ、今回は仕方ない、後で絶対つけよう。


 オレが構えたのを見て、彼女が素早くボールを投げた。
 中から出てきたのは青いワニのようなポケモン、ワニノコ。オレはあいつに見覚えがあった。


 以前ウツギ博士にお使いを頼まれたとき、見せられた3匹のポケモンの中の1匹だ。
 ちょっと目を離した隙に居なくなっていたと言っていた。逃げ出したのかもしれないし、盗まれたのかもしれないとも言っていた。
「何モタモタしてる! さっさと出せ!」


 おっと危ない、また考え込んでいた。考え込むと、他がおろそかになるこの癖、直さないとな。


 そしてオレも、ヒノアラシの入ったボールを投げた。
 そういえば、人とバトルするのはこれが初めてだった。ヒノアラシも心なしか緊張しているように見える。
 やっぱり最初は勝利で飾りたい。オレは目の前のバトルに集中することにした。


 相手のワニノコは、そわそわとしていた。その様子から、あまり戦い慣れていないのがわかった。レベルはきっとこっちと同じぐらいだろう。

「ヒノアラシ! たいあたりだ!」

 オレが叫ぶと、ちゃんと動いてくれる。

 赤髪の女の子も指示を出す。

 ワニノコにひっかかれながらもヒノアラシは懸命にたいあたりを繰り出す。

 その後も、お互いにレベルが低いので、たいあたりとひっかくの応酬が続いた。
 オレは、ヒノアラシが傷つきながらも必死に戦っているのを、見ていることしかできなかった。
 何度もやめたくなった。傷ついているヒノアラシを見ていることが辛かった。でも、ギブアップしたくなるオレを、ヒノアラシが止めるのだ。しゃべったとか、そういうことじゃなくて、自分でもよくわからなかったけど、止めちゃいけない気がした。
 ちらりとヒノアラシがこちらを振り返った。ヒノアラシの細い目と、目があった。
 大丈夫だと言われた気がした。

「トドメだ! もう一発たいあたり!」

 ヒノアラシは気合いを入れるように一声鳴くと、ワニノコに突っ込んでいった。


「あっ! ワニノコ!」

 女の子の声が聞こえた。ワニノコは起き上がらなかった。


「勝った……のか?」

 オレが放心していると、ヒノアラシがオレに飛び付いてきた。

「よくやったな! 初勝利だ!」

 オレはヒノアラシを抱きしめた。もちろん手加減はしている。そしてもう一度誉めてやる。




 遠くからワニノコを戻す音がして、女の子が近づいてきた。
 相変わらず怒ったような仏頂面だった。
 そりゃあ負けたら相手がすげえはしゃいでたらそうなるよな。今度からは気を付けよう。


「チッ お前が勝てたのはオレのポケモンが弱かったからだ」

 オレをキツくにらみながら賞金をオレに押し付けると、彼女は踵を返した。
 そうか、すっかり忘れてたけど、勝てば賞金がもらえるんだった。これのために旅に出たんだっけ。

 オレは半分を手元に、半分をお母さんに送った。塵も積もれば山となる。今はこれだけ、まだまだだ。


 そしてふと足元を見るとカードが落ちていた。拾い上げると、そこにはさっき見た顔。どうやら彼女はトレーナーカードを落としていったらしい。これは届けなければな。
 えーっと、名前は……アギトか…男の子みたいな名前だなー……え?
 オレは自分の目を疑った。トレーナーカードをよく見ると、性別欄に『男』と書いてある。え?
 そう。今まで女の子だと思っていた子は、実は男だったのだ! トレーナーカードを何度も見返してみるが、結果は同じだった。

 う、嘘だろ!だってあんなにかわいい子が男なはずないじゃないか!
 だが、男だと考えると今までのことに納得がいく。はじめ、めちゃくちゃキレていたのは、女と間違えられたから。そういえば口調も男っぽかったし、今思えば声もそれなりに低かったような気がしてきた……。

 今のオレを表すならまさにこんな感じ→orz
 なんかどっと疲れた。すげえ恥ずかしい。さらに申し訳ない。


「オイ!」

 うなだれていると忘れ物に気づいたらしいアギトが戻ってきていたらしい。


「あぁ……アギトか……ほらよ。さっきはまちがっちまって悪かったな」

 オレはアギトにトレーナーカードを渡すと、ふらふらと歩き出した。


「トレーナーカードを見たのか……オイ、お前の名はなんという」

「ヒビキ。お前とタメな」
 はあ……マジでかわいいのにな、男なのか、非常に残念だ。これで女ならかなりタイプだったんだけど。


「フン、俺は世界で一番強くなる男だ。いつか必ずお前を倒す! それまでやられるなよ」

 そんな捨てぜりふを履いて、今度こそアギトは見えなくなってしまった。

 なんか最後の方でまたしてもフラグをたてた気がするんだけと……まあいいか。
 とりあえず早くポケモンセンターに行ってヒノアラシを回復させなくては。


 もう、あたりはすっかり暗くなっている。お腹も空いたなあ。
 そうして俺はポケモンセンターにむけて歩き出した。







 美少年アギトとの出会い。
 初めてバトルに勝った日。



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 アギトの名前はもちろん仮面ライダーからいただきました(笑)
 ヒビキも仮面ライダーであったしね!




とりあえずアギト

アギト(13)
赤髪の美少年
口と目付きが悪い
努力家でツンデレ


てもち
ワニノコ♂Lv.7/ようき


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