さいしょのポケモン
さて、突然だが。この世界はゲームではなく、現実である。
最初の頃は長い夢を見ているのではないか、なんて考えていたのだが、この世に生まれて早12年。さすがにそんなことを言っていられないぐらいにこの世界で生きてきた。
なにが言いたいかと言うと、ポケモンはデータではなく実在する生き物であると言うことだ。
ゲームであれば、片っ端から捕まえて、育てて、使えなければメンバーからはずしたりするのだが、ポケモンは生き物であり、そう簡単に替えの効くものでもない。
別に入れ換えがダメというわけではないんだろうけれど、個人的にも愛着がわいて逃がせないからな。やっぱり俺の好きなポケモンで固めたい……。ポケモン選びは慎重にしないといけない。
ポケモンバトルは、ストーリー上だけでなく、トレーナー同士でもできる。 いわゆる対人戦と呼ばれるそれで、相手より強いパーティーを作るには、メンバーや覚えさせる技だけでなく、努力値や個体値にも気を配る必要がある。
わがままを言うなら個体値も厳選したいところだが、この世界ではそんなことをしている人はいない。もしもそんなことをしていたら非人道的だとポケモン愛護団体から非難集中だろう。
つまり、強さだけを追い求めた手持ちにすることは難しいと言うこと。
「でもせめて性格ぐらいは厳選しても許されるよな?」
俺は今、マツバのゲンガーと一緒に、エンジュの山奥に来ている。言わずもがな、このゲンガーとはじめて出会った場所でもある。
マツバの強い勧めもあり、俺は最初のポケモンをゴースにしようと考えていた。
個人的に速いポケモンが好きな俺は、典型的な速攻ポケモンであるゲンガーを実際によく使っていた。もちろんゲームでだけど。
しばらく歩くと、ゴースの溜まり場を見つけた。たくさんのゴースがふよふよと漂っている。
見た目があれゆえ、紫の集合体みたいで若干気持ち悪いが、だからといって大声を出して逃がすわけにはいかない。俺は小声でゲンガーに話しかけた。
「なあ、あの中から臆病か控えめな性格のゴースを見つけられるか?」
俺の言葉を聞いたゲンガーは首をかしげたが、すぐにニヤリと笑うと俺の肩をさわってからゴースの群れに近づいていった。
ここから俺は完全に暇になった。ゲンガーはたくさんのゴースたちと楽しくおしゃべりしている(ようにみえる)。いつまでやってんだよとも思うが、性格は非常に重要だ。ここで我慢できずに飛び出して、とりあえず近くにいたゴースを捕まえたとして、そのゴースが意地っ張りとかだったら俺がその選択を一生後悔することは火を見るより明らかだ。それに片っ端から捕まえるよりは……。
つーか片っ端から捕まえたとしても一目見ただけでそいつの性格なんてわからないよね。あー俺オワタ。
性格の厳選の難しさと、そもそもゲームみたいにきっちり性格が別れるものなのか、ていうかこの世界でも性格でステータスに補正かかるの?とか、色々と考え出したらキリがなく、テンションも下降の一途だ。
キノコでも生えてきそうなじめじめとしたオーラを放っていると、ゲンガーが1匹のゴースをつれて戻ってきた。
「ただ遊んでただけじゃなかったんだな……」
俺は今猛烈に感動している。今までやさぐれていただけに、ゲンガーの優しさが見に染みた。
「よっし早速ゲットだ!」
ちょっと無理矢理ではあるが、テンションを上げて空のモンスターボールを取り出す。すると今まで浮かんでいたゴースが行きなりこちらに向かって突進してきた。
ヤバイと思う暇なく、ゴースはぶつかった。俺の手にある空のモンスターボールに。
お分かりいただけただろうか。手元を見ると、ゲームのようなハラハラとした動きもなく、ちゃっかりボールの中に入っているゴースと目が合った。
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今回の更新に合わせて用語集作っときました。
わからない単語があれば報告ください。早急に追加します。
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